キウイの声

MAMEHICOでは、去年からいろんな果物を扱ってパフェをやっています。
その中で、いま出しているのが「キウイのパフェ」です。
クリームのコクと、キウイのシャープな酸味、ヨーグルトの爽やかさと、バニラアイスの甘さ、果肉のざらっとした食感が美味しいと、おかげさまで出だしは好調で、ボクたちが思っていたより注文してくれるお客さんが多かったんです。

でも、5月、ときどき寒かったでしょう?そうでしたよね。
寒いとですね、このキウイパフェ。ぱったりと出ないんであります。
イチゴなら冬でもですね、関係なく出ます。
なのにキウイ、これは寒いと売れない。

まったくもって、お客というのは自分勝手な生き物でしてね。
私達も困っております。
そして、どうもこのあたり、いろいろと問題があると思ってましてね。

そもそも、キウイって地味な果物ですね。
あれ、茶色くて、毛が生えてて、まず見た目がさえない。
イチゴみたいに可愛くないし、桃やマンゴーみたいなトロピカル感も薄い。
もともとこの果物、中国原産だそうで、20世紀初頭にニュージーランドに種が渡って、改良され、いまのような品種に育ったらしい。
現地ではチャイニーズ・グーズベリーと呼ばれていたのが、ニュージーランドの国鳥にちなんで「キウイフルーツ」という名前に変わったのが1950年代。

最近では品種もずいぶん増えて、いわゆるグリーンの『ヘイワード』だけじゃなくて、甘みの強い『ゴールド』、香りのある『レインボーレッド』、果肉のなめらかな『サンゴールド』など、個性のちがうものが東京のスーパーにも出てきています。

で。あのうちは、変わり者のMAMEHICOなんで。
MAMEHICOは変わり者じゃないけど、ボクは変わり者なんで。
できるなら国産のキウイを店で扱いたい、とつねづねボクは思っていたんです。

国産のキウイです。えっ、知らないの?
東京近郊にも、数は少ないけれど農家さんがいることを?
何にも知らねーなー。
ボクが住んでる横浜にもですね、キウイを育ててる農家さんがいます。
そんで話を聞きに行ってみた。

するとですよ、まず収穫は秋。
採ってもすぐには出荷しないそうで、2ヶ月ぐらい冷蔵庫で追熟させて、ようやく果肉が柔らかく酸味もまろやかになったころに出荷してるとか。

つまり旬はいつなんですか?
大変申し上げにくいんですが、2月から3月です。というじゃありませんかっっ。
2月です。巷はバレンタインデー一色です。ピンクにこげ茶色です。

そんなときにですよ、毛むくじゃらの「キウイを食べたい」と思ってくれるヒトって、いますかねぇ。
だって日本中が一番浮かれているときですよ。
果物は王者イチゴの一人勝ちですよ。
そんな時期が、まさかの国産キウイの旬。

地味よねぇ。
MAMEHICOでいくら押してもねぇ。
お客さんの心が動くかどうか。
…なかなかに難しいと思います。

ボクらカフェに求められるものは、やっぱりお客さんの気分に合わせたメニューづくりです。
いくら国産推奨と頑張っても、一人よがりはダメなんですよ。

結局のところ、みなさんの食生活や食習慣って、作られたイメージで決まるところがありませんか?
朝はパンとコーヒーよね。
ヨーグルトにはグラノーラだわ。
イタリアンにはオリーブオイルに決まり。
お紅茶にはスコーン。
麻婆豆腐には豆板醤。

知らないうちに『こうあるべき』ってイメージを、ボクたちは徹底的に刷り込まれてしまっている。

巷のニュースは、お米が足りないって話題で煽ってますけど、お米なくちゃ困るってヒト、どれくらいいるんでしょうか、ボクは疑問があります。
安いパンやパスタが、定番になってるわけで、「べつになくても困らなくね」と思ってるヒトは、若者に限らず多いはずです。
だってスーパーの売り場見ればわかるじゃん。

MAMEHICOは、直接農家さんに近いところからお米を取ってるので、無くなるっていう感じはしてませんけど。
ここまで米農家を減らし、イメージ戦略で小麦を推奨してきたツケが、やっと、ようやくやっと、露見しただけでしかないでしょう。
(さらに外国産のお米を入れようとしているかもしれないし)

まぁ、そんなことより、うちのキウイパフェ。
この冬、王者イチゴにぶつけてやってみよーかなー。んー、けど難しいだろうなー。
うちで玄米炊いて、お昼にお弁当始めようと思ってるけど、そいつも難しいだろーなー。
黒豆だって、人気ないもんなー。

「ワタクシはお米ないと困りますッ。冬のキウイもぜひ食べてみたいッッ」

そういう奇特なかたは、そのまま信念をお持ちいただいて。
マスとなると、大きい者たちのイメージの刷り込みは、崩せる気がしないほどに、強く固いものなのであります。

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