しずかなる功労者たち

去年の秋から、ちょこちょこ桐生に通っては、紫香邸の庭をせっせといじっています。
そんなに広い庭じゃないけど、ほっておけばすぐにジャングルになる。
忙しいだの、いまやろうとしてたとこだの、そんな甘っちょろい言い訳は、植物には一切通用しないことを、ハタケマメヒコで痛感してるから。
MAMEHICO紫香邸としている以上、庭の管理も立派な仕事です。

今の時期は、ドクダミがすごい。
抜いても抜いても減りません。
あいつらは、ぜんぶ地下のシンジゲートでつながってるから。
一網打尽にしようと戦っても、一切を撲滅するのは無理なはなしです。
見つけたら引っこ抜くという、付け焼き刃とわかっていても、手を動かし、引っこ抜くほかありません。

剪定で出た枝や葉っぱは、庭の端っこにまとめて積んでおくんです。
去年の秋、半年くらい溜めてあった枯れ葉の山を、思い立ってスコップで掘ってみたことがあった。
すると、下から黒くてふかふかのきれいな土が出てきて、そのなかにミミズがにょろにょろと出てきて、
「ミミズくん、キミが土にしてくれたんだね、ありがとー」って、ちょっとした感動物語があったんです。

で、今回も剪定した葉を積みに行った。
そしたらですね。なんか枯れ葉全体が、ガサガサと小刻みに震えてる気がしたんです。

「え?何?」と思って、最近ボクは老眼ですから、よーく見てみたら、なんと。

うじゃうじゃと、そこには、何千匹、いや何万匹というゴキブリが、うごめいているではありませんか。
こんなにもたくさんのゴキブリを、ボクは人生で初めて見ました。
それは気持ち悪いを通り越して、なんかもう圧巻、美しかった(それは言い過ぎ)。

調べてみたら、あれはモリチャバネゴキブリというらしい。
「森」って名前がついてるくらいだから、落ち葉や枯れ草を食べて生きてるそうです。
このあいだ「ミミズさんありがとー」なんて言ってたけど、そのもっと前に、「ゴキブリさんたちが、大群でせっせと有機物を分解してくれてた」んだと思ったら、自分がとても恥ずかしくなりました。

もちろん、その光景は、鳥肌が立つほど気持ち悪かったですよ。
でも、見えないところで、黙って、きちんと、誰に褒められることもなく、いやむしろ、殺虫剤なんかかけられながらも、落ち葉をせっせと分解してくれてる(べつにボクたちのためにやってるわけじゃないけど)。
──なんだかもう、頭が下がる思いをしたんです。

光なんか当たらなくても、しぶとく、黙々と、自分にできることをやっていく。
MAMEHICOもボクも、こういうふうでありたいなと思った。

就活しても、正社員になれなかった。
派遣、契約、アルバイトを転々として、キャリアなんてものも積めず、貯金もない。
年金だって、もう諦めている。
そんなボク達を国は見捨てて、未来も夢も描けない責任をどう取ってくれるのか。
──ゴキブリに考えさせられるところがあります。

紫香邸には、使われなくなっていた古い池があって、底が割れていて、水が溜まらないようになっていました。
それをこの週末、防水セメントで穴埋めをして補修しました。
そこがきちんと池になったら、蓮の花を植えようと思っています。

「エトワール★ヨシノ」の歌に、「夏の朝、畔にて」という蓮の歌があります。
来月は銀座で、エトワール★ヨシノのライブです。

 

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