こんにちは、MAMEHICO神戸・御影スタッフの水野知帆です。
私がMAMEHICOに惹かれ、なぜいまも、MAMEHICO 神戸にいるのか。
そのきっかけになったイベントがあります。そのことを今日はお話します。
それは、MAMEHICO銀座で月に一回行われていた『面白可笑ひこ』というイベントです。
これは井川さんが発案したもので、たった一回の稽古で、誰でも参加できる歌あり、話あり、お芝居ありの出し物、というもの。
なんとも不思議なイベントです。誰かに説明すればするほど、訳がわからない出し物なのです。
ほんと井川さんの企画って、最初聞いただけでは訳が分からないものが多いんです。
企画から脚本、演出にいたるまで、井川さんがすべて一人で考えていて、そこになんだかわかんないけどみんなが巻き込まれていく。
お芝居だったり、ラジオだったり、ドラマや映画だったり。もちろん普段のカフェもすべて。
あるカフェが作っているというより、井川さんだから作れる、井川マジックと呼ばれるスタイルで、ものを創っていくことに、未経験者がみんな巻き込まれている、それが私が見たMAMEHICOの裏側です。
巻き込まれているみんなは、一体、何を作ろうとしているのか、そもそも、どこに向かっているのか完成するまではわからない。
だから、私もこの『面白可笑ひこ』をお客さんとして見たときに、何が起きているのか訳がわからなかったんです。
私がはじめて見たのは、『面白可笑ひこ・公開オーディション編』というコントのようなものでした。
『面白可笑ひこ』というのは寸劇のようなもの、と聞いて見に行っていたんです。
ところが当たり前のように、お芝居の公演が始まると思ってたら、「今日は公開オーディションにお集まりいただきありがとうございます。ここにいるみなさんは参加者ですから」と司会の人が発表し、観客として座っていた私たちが、急に舞台に上がる側になってて、観客はみんなびっくり。
その場で抽選が始まり、番号を呼ばれた人がステージに上がる流れ。
司会の人に「今日は何を披露しに来たんですか?」なんて厳しく聞かれるものだから、みんな戸惑ったり、もじもじしたり。
これだけ聞くと、最悪のイベントのようですが、一見おとなしそうな参加者が、気持ちよさそうに歌いだしたりするんです。
ステージの横には審査員席があって、そこに井川さんが座ってて。
出てきた即興のパフォーマンスに対して「あーでもない、こーでもない」と言いながら寸評を繰り広げるのですが、それがまた絶妙で、面白いのにちょっと鋭くて、観客も舞台に上がった人も大爆笑の渦。
最後は会場全体が緊張感と笑い、それと温かい空気でいっぱいになって幕を閉じました。
言葉でうまく表現できないけれど、あの瞬間瞬間、すべてが面白かった。
みんな即興でなんとかしている姿を目の当たりにして、すごく感動もしたんです。
家に帰って、何であんな風になったのか、思い返しても全く分からなくて。
でもなんか温かい気持ちだけは残ってて。
自分の中で整理がつかないMAMEHICOの井川さんを、もっと知りたくなった、それが今日まで続いています。
私はそれまで、決まったことは予定通り進んでいくものだと思って過ごしていたんです。
ところがMAMEHICOの井川さんは、決まっていたことを平気で、どんどんと変えていく。
それが必然のように転がっていって。
自分の経験してきたことや、想像力がいかに乏しいのかと、そのたびに思い知りました。
そうやってMAMEHICOに触れていくうちに、私自身が変わったことに気づいたんです。
感動させようとして計算されて作られたものを見ても、嘘っぽく思えて、だんだんと感動できなくなってきていました。
何が起こるか分からない、だからこそなんとかする、その瞬間が生きていると感じる。
それってなんて面白いんだろって。
『面白可笑ひこ』という名前も、そういう意味で井川さんがつけたとしたら、どこまで考えているんだろうって。
御影のMAMEHICOに来て、そろそろ一年になりますが、ここでの毎日も、初めてのことばかりで疲れる、だけど飽きないんです。
井川さんが創る世界に触れて、私が変わったことは、何が起こるか分からないことこそが、面白いと確信できたことかもしれません。