水のようなヒト

チェーン店のカレーライス屋さんがあって、それをフランチャイズ展開している会社の社長に、22歳のアルバイトの女性が就任したと、WEBニュースに載っていました。
ボクはそのお店に行ったことがないのだけれど、その彼女のインタビュー記事を読んでいて、「おや、上善如水」と思ったんです。

なんでも。彼女は、高校生のときにそのチェーン店にアルバイトで働き始め、シフトに入っていない日でも、休憩室に遊びに行ったりしていた。
ほぼ毎日、お店に入り浸っていた高校時代を、「あの頃は、青春でしたっ」と振り返ってました(ていうか、つい数年前のことだけど)。

高校卒業後、バイト先の社員になるつもりはなくて、誰かの役に立ちたいからと、ボランティアなんかをやったそうです。
だけど、どうも違うなとなって、古巣のアルバイト先に戻ってきた。
そしたら、あれよあれよと社長になっちゃいました。
まぁ、あらすじはそんなところです。

彼女が言うには、「きちんと働けば、きちんと評価してくれる人達がお店にはいた。
同じ価値観を持った仲間がいる。それにすごい価値があった」。

価値観の近いヒトたちといたい。
そう思っても、それに素直に行動するのって、案外難しいものだと思います。

「27店舗、400人の社員がいる会社のトップですが、プレッシャーはないですか!?」と記者が煽ってるんだけど、彼女は「あっ、とくにないです」という感じで返しています。
「社長やらないかい?」
「いいですね。面白そう」と始めただけで、「社長になりたかったわけじゃないし、べつにこれがゴールでもないし(こんな乱暴な言い方はしてませんよ)」と、気負いがないんですね。

世の中には、どうやりくりしたって楽しめない仕事もあるでしょうし、若い女の子が屈託ない笑顔で、「仕事を楽しんでたら、そのまま社長になっちゃいました」(こんな軽い感じでは言ってませんけど)、なんて記事読めば、「オモシロカねーや」と言いたくなる気持ち、わからないんじゃないですけど。

ボクは彼女にもちろん会ったことありませんが、彼女の水のような強さは共感します。

中国の大家、老子の言葉に「上善如水」っていうのがあります。
水はみんなが嫌がる低いところへ流れていく性質があるから素晴らしい。
アルバイト時代、彼女はヒトが嫌がることも進んでやってたんだと思うんですね。
それが評価されたのは間違いないと思います。

飲食店ていうのは、ほんとに低い姿勢でやらないとやれないことばかりです。
低いところを流れていたら、社長という高いところに行き着いてしまった。

「最初から上を狙ってたんじゃないの?だって社長を打診されたって、アルバイトのままでいいです、と断ることもできたわけじゃん」。
たしかにそうですね。

水がすごいのは、四角い器に注げば四角になるし、丸い器に注げば丸い形にもなる、無作為そのものなんだと、老子は言っています。
アルバイトならアルバイトなりにやる。
社長やれといわれたら断らず、無為自然、自分なりに振る舞えばいい。
彼女はそう考えたんだと思う。

水の長所を持っている彼女は、当然、水の短所、優柔不断とか、自分がないとかも兼ね備えているはずですよ(勝手に言ってます、すいません)。
だけど会社って社長一人でやってるわけじゃないから、火のようなヒト、土のようなヒト、木のようなヒト、金のようなヒト。
いろんなヒトの長所と短所を組み合わせて、うまくやればいいわけです。
なんとなーく、頑張ってほしいなと思っています。

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