cinemusicaと歩む、心の変化

こんにちは!MAMEHICO東京メンバーの永井宏佳(ひろし)です。
cinemusicaでは、掃除夫役を演じてます。

昨年東京で2回の公演、そして今回の神戸。
MAMEHICOとしては珍しい、息の長い公演となっているcinemusicaですが、元々ぼくは何度も同じ演目をやることについては気が進まなかったんです。

役者としてはやはり新しいもの、よりチャレンジングなものに取り組みたい。
そして、スキルの幅を広げていきたい。といった気持ちがありました。
でも3回公演を行い、そういう気持ちはほとんどなくなりました。
むしろ、もっと多くの人にcinemusicaを見てもらいたい、届けたい、という気持ちが回を重ねるごとに強くなっています。

何が心境の変化をもたらしたんだろう、と考えた時に、1番は間違いなくお客さんです。
cinemusicaは、音楽と映画と演劇がミックスになったちょっと変わった舞台。
変わったものって、オススメの仕方が難しいんです。
音楽ライブや映画を観に行くこともめっきり減っているご時世に、それらをミックスしたものなんてイメージできないですから。

でも、感動して泣いてくれるお客さんがたくさんいたり、全公演に来てくれるお客さんがいたり、届いてる実感がたしかにあるんです。
月額1000円で映画見放題、とか、結果にコミット、とか、分かりやすい謳い文句ではバリューを伝えられないけれど、真に人の心を打つものって簡単には伝えられないんだと思う。

1800年代の終わり、パリのグランカフェで初めて映画を観た人たちは、『列車の到着』の驚きを、どのようにまだ観ぬ人たちに伝えたのでしょう。
目にした人は、接近してくる電車にびっくりしてひっくり返ったらしいのですが、その驚きを言葉で伝えるのってすごく難しい。
映画は当時、識字率が低いアメリカで、本や新聞の読めないブルーカラーの人たちを救う娯楽として、爆発的に普及していったそうです。

神戸の公演を観に来てくれたお客さんの1人が、「いろいろ辛かったけど、これまで生きてきて良かったと思えました」って言ってくれたんです。

毎日のご飯はある。
仕事もある。
暇を潰すための娯楽にも事欠かない。
こんなに豊かになったのに、でも。なんだか生きにくい、物足りない。

エンターテイメントが救えるものは、そこかもしれません。
なにしろ、僕がお芝居によって救われた身です。
4年間MAMEHICOのお芝居に触れ、ずいぶん生きやすくなりました。
現代のグランカフェにMAMEHICOがなれたらって。
ちょっと大げさな話ですが、本気でそう思うのです。

今年、神戸と東京で再演を計画してるので、ぜひ観に来てください。

   

2025.7.6
cinemusica
MAMEHICO東京・銀座にて

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