こんにちは。MAMEHICO神戸・御影 店長の渡辺 臣将(しげまさ)です。
「御影珈琲野点」は、近畿大学・村松秀教授率いる村松ゼミと、MAMEHICO神戸・御影が一緒に取り組む産学連携プロジェクトとしてスタートしました。
御影という土地に昔からあるレガシーや暮らしの記憶を、学生たちの視点MAMEHICOの珈琲文化を掛け合わせて再発見していく。その入口として、外で珈琲を淹れる「野点(のだて)」という、ささやかな実験からはじまった企画です。
今回の会場は、海を望む御影山手の美しいお庭。
少し肌寒い風が吹く中、第一回「御影珈琲野点」が静かに幕を開けました。
11月3日、文化の日。
山手の変わりやすい空は、開演前に小雨がぱらつく瞬間もありましたが、それでもどうにか味方してくれて、村松ゼミの学生たちもほっと息をついていました。
学生のみなさんは、この日の準備と運営をすべて担ってくれました。
教授の合図で動き、細かな段取りを重ね、緊張を抱えながらも真っすぐに場をつくっていく姿は、きっと良い経験になったのではないかと感じます。
さて今回の野点では、僕自身がその場で珈琲を淹れました。
外で淹れる珈琲は、店内とはまったく違う表情になります。
淹れたてをお渡しすると、
「外で飲むと、なんでこんなにおいしいんでしょう」
「これは別格ですね」
と、初めての方も、常連の方も同じように驚いてくださる。
その反応が本当にうれしくて。
そしてそんな珈琲を片手に、家主の方が御影での暮らしや、この土地に流れてきた時間のことを語ってくださいました。
参加者のみなさんも自然と耳を傾け、思い出をぽつりぽつりと重ねていく。
御影を知らない方が「こんな場所があったんですね」と目を輝かせ、地元の方が「いやあ、住んでても知らんかったわ」と笑う。
MAMEHICOが御影にお店を構えて3年。
「地域の居場所」をつくりたいと願いながらも、どれほど根を張れているのか不安になる瞬間はありました。
でも、この日の光景を目の前にして、ああ、少しだけ根が張れたのかもしれない。そんな気持ちが、ふっと胸に灯ったのです。
この産学連携プロジェクトでは、家主の方や参加者のみなさんの言葉をアーカイブし、御影のレガシーを静かに紐解いていく取り組みへと育てていきます。
それこそ、この土地が持つ奥行きを未来へつないでいく作業だと思うからです。
そして「御影珈琲野点」は、一度きりで終わりません。
季節が変われば、風景も香りも変わります。
これから何度も続けていくつもりです。
次回は、桜の咲く季節に。きっと、また違う色の御影に出会えるはずです。
そのときはまた、お会いしましょう。



