【20th】小さな美しさに還る

みなさま、こんにちは。MAMEHICO東京メンバーの谷川一樹です。

MAMEHICOの20周年メッセージに投稿してみませんか、とお話を頂き、「OK~!」と軽く返事したものの、MAMEHICOには説明が簡単でない色んな魅力が詰まっていて、しばらくフリーズしていました。笑
とはいえ3つくらいに絞って書こうかなと思います。

前回からのつづき)

【3.小さな美しい世界に気づく】
あくせくと働いていると、日常の小さな美しい世界を忘れてしまいます。
それは、空の青さとか、雲のかたちとか、道端の草花の変化とか、例えばそういうことです。

そういえば。
MAMEHICOの何かのイベントでカツサンドが出てきたことがあります。
あるスタッフさんが、今まではカツを揚げると曲がってカールしがちだったものを、工夫をして曲がらないようにしたと。
そして、そのスタッフさんは今日カツが曲がらなかったことが大満足で幸せを感じていると。
そんな裏話を聞きました。

ただおいしいと思って食べていたカツサンドだったけど、自分が知らないそんな小さな美しい世界があったなんて!と、衝撃を受けた出来事でした。
MAMEHICOでは、テーブルに飾ってある季節のお花や、目を閉じて素材を味わいたくなる季節の野菜が、そういう小さな美しい世界を思い出させてくれるんです。

少し前に役所広司さんが主演の「PERFECT DAYS」という映画を観ました。
都内のトイレ清掃を仕事にしている主人公の平凡な日常が描かれている部分が多く、以前の自分だったらもしかしたら退屈な映画だと思ったかもしれません。

例えば、主人公は毎日同じ公園の木陰のベンチでパンと牛乳の簡単なランチをとるのですが、毎日上を見上げて、生い茂った木の葉とそのすき間からのぞく青空、お日さまの光を写真に収めるんです。
それに関する解説もなければセリフもありませんが、きっと主人公にとっては、毎日その瞬間瞬間で見える景色は、葉っぱも、空も、葉っぱのすき間からのぞく太陽の光の具合も、感じる風も、少しずつ変わっていて、そのことに美しさを感じて毎日見上げ、写真を撮るのだろうと思います。

「ああ、わかる!わかるぞ~~~!」
MAMEHICOで小さな美しい世界に触れた今の自分なら、そのことがよくわかります。
そうなれてよかったなとつくづく思います。

【人間性を取り戻す】

さて、色々書きましたが、今の自分にとってこういうことは「人間性」そのもので、MAMEHICOは「人間性を取り戻す場」なのかもしれないなと思います。

最近ある本で、「分人」という概念に出会いました。
一人ひとりに固有の「本当の自分」みたいなものがあって、例えば馴染めていない職場で周りに合わせて振る舞う自分がいて「本当の自分というのは別にあって、これは本当の自分ではない」というような考え方は一般的にあるのではないでしょうか。

でも「分人」の概念はその常識を疑い「人は相手や状況に応じて複数の人格を持って当然」と主張します。
対人関係ごとに生まれる人格を「分人」としその集合体が今の自分だ、というのです。
ただ、職場での自分、家族と居るときの自分、一人で居るときの自分、友達と居るときの自分、どれも自分なのですが、それぞれの構成比率が人によって異なるし、その比率も絶えず変化するのだと言います。

個人的にはこの考え方にしっくりきたし、「唯一絶対の本当の自分なんてない」という考え方に少し気が楽になりました。
たぶん僕がMAMEHICOのことを人間性を「取り戻す」場だと感じるのは、現時点では自分にとって必ずしも気持ちのよくない「分人」を使っている割合が大きいのでしょう。

そういう意味では、僕の人生のゴールは僕の中の分人のMAMEHICO的な割合を一番大きくすることで、それこそが僕にとって豊かに生きることなのかもしれません。
MAMEHICOはこれからも変わらずそういう場であってほしいし、きっと間違いなくそうあってくれると思います。