【20th】心に残る味と空気

みなさま、こんにちは。MAMEHICO東京メンバーの前田佳宏です。

MAMEHICOのことを思い出すと、ふっと気持ちがほぐれる。
あのカフェに初めて行ったのは、まだ地方大学の医学生だった頃だ。
カフェ巡りが好きで、東京に行く予定があるたびに、個性的なカフェを探しては足を運んでいた。
その中で出会ったのが、カフエマメヒコ宇田川町店だった。

カフェ入口の分厚い扉を閉めると、外の喧騒とは一転して、静かでゆったりした時間が流れていた。
重厚感のある壁紙やアンティークの家具――どれもがしっかりした作りで、丁寧に手入れされているのが伝わってきた。
メニューの冊子を開くと、飲み物や食べ物を紹介する文章がおもしろく、つい最後まで読んでしまった。

最初に頼んだチーズトーストは、本当に美味しくて今でも覚えている。
見た目はシンプルで洗練され、香りだけでも十分に心をつかまれた。
パンのふわふわと溶けたチーズのざらつき、コショウの香り――そのバランスが絶妙で、「ああ、こういうの、ずっと食べたかったな」と思ったことをはっきり覚えている。

卒業後、東京の病院に就職してからは、MAMEHICOの代表・井川さんのお話会にも参加できた。
自分の視点や視野が広がる瞬間が好きな僕にとって、井川さんの話はとても刺激的だった。
MAMEHICOの創作活動も好きで、映画や演劇の空気感がしっくりきて、日常のひとつひとつをもっと丁寧に味わいたくなった。

「タダヒコ」というイベントでは、店員のお手伝いをした。
開店前のカフェで床を掃除していると、まるで生まれ変わってカフェ店員になったような気分だった。
スタッフのみなさんとも親しくなり、普段の人手不足のときに少しだけ手伝えるようになったことも楽しかった。

また、マメヒコの演劇「ゲーテ診療所」にちなんで、「ゲーテカフェ」という哲学対話の会を、公園通り店で毎月開かせてもらったこともある。
マメヒコの空気感がちょうどよく、「ひとりでは気づけなかったこと」や「誰かの視点で得られた新しい考え」に何度も出会えた。

季節ごとに登場する檸檬ケーキやカンボジアプリンも、小さな楽しみで、何度も足を運んだ。
たまに開かれるお食事会では、丁寧に作られた料理がとびきり美味しくて、感動したことを覚えている。

MAMEHICOで過ごした時間は、自分でも驚くほど心に残っている。
あたたかくて、やさしくて、特別なことがなくても「ここに来てよかった」と心から思える。
またいつか、ふらっと立ち寄りたい。