ひとつずつ、ていねいに

こんにちは。MAMEHICOのなかじゅんこと、なかがわじゅんこです。
もう10年近く、MAMEHICOで、毎日なにかしらを作っている私です。
毎日が同じようで、毎日が新しい。──これが、10年以上、毎日MAMEHICOに通っている私の日常です。

ある日、井川さんがふと声をかけました。
「マフィンを新しく、作ってみようか」
何気ないひと言。でも、こうしたひと言が、いつもすべての始まりになります。

今回のテーマはマフィン。
お菓子の中でも素朴で、毎日食べても飽きない存在。だからこそ、奥が深い。
MAMEHICOでもこれまでに何度もマフィンを作ってきました。
過去のレシピも山ほどあります。
それなのに、またマフィン?と思いながらも、お店に届いた新しい焼き型を手に、とにかくやってみることにしました。

まずはレシピを確認し、材料を丁寧に計量します。
粉、卵、バター、牛乳──どれも見慣れた材料ばかり。
でも、井川さんが「やってみよう」と言うときは、いつもそこに何か意図があります。
最初はわからなくても、やってみると、少しずつその輪郭が見えてくる。
そんなふうに私は感じています。

生地を混ぜ、少し寝かせて、オーブンへ。
まずは言われた通りに焼いてみて、ひとつ味見をし、あとは井川さんに渡します。

「オーブンの温度、少し高すぎたかな」「バターの混ぜ方が甘かったかも」──焼き上がったマフィンを手で割って、断面をじっと見つめながら、そんなふうに考えます。
生地のキメ、しっとり感、香り。
それらを目と鼻と手で確かめながら、昨日より今日、今日より明日と、少しでも良くなるように、毎日同じレシピで焼き続けます。

しばらくすると、井川さんから新たな指示が出ました。
「オーブンの温度を変えてみて。あと、A・B・Cの3種類のレシピを試してみて」

配合や混ぜ方、焼き時間の異なる3パターン。
それぞれ微妙に違っていて、どれも甲乙つけがたい美味しさ。
でも、その違いにどんな意図があるのか、私にはまだはっきりとはわかりません。

それでも、焼いて、食べて、感じて、また焼く。
そんな日々を繰り返すうちに、あるとき、ふと思いついたことがあり、それを井川さんに相談すると、すぐにレシピの修正が入り、新しいものが届きました。

翌日、そのレシピで焼いたマフィンを食べた井川さんが、笑って言いました。
「うわっ、これ!いい!美味しいね!!!」

そのひと言を聞いた瞬間、私はひとり「やったー」と拍手しました。──こういう瞬間があるから、MAMEHICOの仕事はやめられないのです。

そのレシピを他のスタッフにも伝えると、「型から外しにくい」など、新たな課題が出てきました。
人が変わると、同じレシピでも結果が変わる。
けれど、そこで終わりにはせず、また調整し、直し続けます。
完成というより、育てていくという感覚に近いかもしれません。

味が定まり、パッケージや箱、値段も決まりました。いよいよ販売できます。
これまでの試行錯誤が詰まった、私たちのマフィン。
ほんとうに、ほんとうに、美味しいんです。
できることなら、ご来店くださったお客さま全員に、ひとつずつ配って歩きたいくらい。笑
そんな気持ちで、今日もまた、マフィンを焼いています。

 

新作マフィンも入っている
20周年のお福分け
オンラインショップにて販売中
(各店舗ではマフィンのみの販売もしています)