こんにちは!MAMEHICOの永井宏佳(ひろし)です。
MAMEHICOでは月に一回、ラジオドラマ『面白RADIO』を配信しています。
ぼくは、カフェの常連客のセツオ役を演じています。
さて。MAMEHICOで4年ほど、演劇、ドラマ、音声、いろいろなお芝居をやらせてもらってます。
お芝居って、いくらやっても難しい。
喫茶店が好きで、人が好きで、食を楽しむのが好きな「セツオ」という人間を上手く表現できず、なかなかしっくりきませんでした。
オタクな人の喋り方、スポーツ解説者の喋り方、食レポの人の喋り方、好好爺な人の喋り方、ナレーターの人の喋り方、…いろんな人の喋り方を聞いて、真似してみたりしました。とにもかくにも試行錯誤。
そして、あ、いけそう。手応えを感じた瞬間がありました。「セツオ」をつかんだ気がする。
そんなタイミングで、監督の井川さんからこんな指摘を受けました。
「もっと、愛を携えて芝居をするように」
愛を携えて…?携えてるつもりなのだが…。
喫茶店や、コーヒー、スイーツ、あらゆるものを愛でる人間「セツオ」を演じていたつもりでした。
自分の音声を聞いてみました。あれ?なんか違う。
確かにイントネーションはそれっぽいのですが、なんだか軽薄なんです。
何が違うのだろう。「愛を携える」とはなんだ。
友達と古い喫茶店に足を運んでみました。昭和46年からやってる老舗のお店です。
お茶をしていると、大声が聞こえてきました。常連のおじいさんが喧嘩を始めたんです。
聞き耳を立ててみました。どうやら、お互いに「相手の態度が悪い」と言い合っているようでした。
ひとしきり口喧嘩をしてたのですが。だんだんとトーンダウンし始めました。
そして、「まぁ、お互い仲良くやろうや」って。急な手打ちが取り交わされました。
何事もなかったかのように、またコーヒーを飲み始める2人。
この人たちはいつもこんな風に、仲良く喧嘩してるんだろうか。
目の前では友人が唖然とした顔をして、その光景を眺めていました。
なんか、ほっこりとした気持ちになりました。
いつの間にか、口元が緩んでニコニコしている自分がいました。
ああ、そういうことか。ぼくは演技プランに気を取られて、周りが見えていなかったのです。
次の収録の日、努めて、周囲をよく眺めてみるようにしてみました。
仲間たちが一生懸命収録をしている。
上手くいかずにうんうん言いながら、リテイクを繰り返してる。
出番を待つ役者は、気が気じゃない素振りで自分のセリフをブツブツ呟いてる。
厨房では賄いの準備が進んでいる。
収録が終わり安心したメンバーは、温かい目をして収録の様子を見守ってる。
なんて幸せな光景なのだろう。職場じゃこういう景色を見ることはないなぁ。
なんだ。わざわざ携えようと努力しなくても、ここには確かに愛があるではないか。
追い込まれると、人は大事な景色を見落とします。
自分の内側で全てを解決しようと、自閉的な努力を始める。
でも答えって、だいたい外側にあるのだと思う。
面白RADIOは「聞き耳を立てる」が、ひとつのキーワードになってます。
聞き耳を立てると、外には愛らしい光景が広がっている。
ぜひみなさんも、セツオと一緒に聞き耳を立ててみてください。
身の回りの世界の愛おしさに、気がつくきっかけになるかもしれません。

2025.2月 面白RADIO
「誠実なチョコレート」
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