【20th】静かな呼吸を思い出すとき

MAMEHICO 20周年おめでとうございます。
MAMEHICOで井川さんの作るお芝居や映画を、もう10年以上、欠かさず見続けているMAMEHICO東京メンバーのワセダヨウコです。

初めてMAMEHICOの作品に出会ったのはたしか2012年。
たまたまご飯を食べに入った(いまは無き)渋谷のマメヒコ飯店で「今日はこれから映画上映なんです」と言われて、とまどいなからも、ご飯の変わりにお茶をいただきながら井川さん監督の「紫陽花とバタークリーム」を拝見したのでした。

「なんかちゃんとした映画だ、、風景がきれいだな、、」とはじめに感じたのを覚えています。

「紫陽花とバタークリーム」はちょっとほろ苦い後味が残るとてもいい映画でした。
強く印象に残ったのが、カフェの店主(田口トモロヲさん)がたまたま関わった女性客の母親(キムラ緑子さん)に手厳しい言葉を投げかけられるシーン。

年頃の若い女の子たちを騙してこんなカフェをやって、彼女たちの将来をちゃんと考えているのか?というような内容でした。
その後、なにも言い返せなかった店主の思いがナレーションで語られます。

ー花はなにか目的があるからでなく、未来が約束されているからでもなく、だだ「いま咲きたいから咲いている」のではないかーと。

受け取る人によるのかもしれないですが、当時のわたしには自分を「肯定された」と感じられました。

計画的であること、効率的であること、個性を見つけて発揮すること、、いまの社会は我々にそういったことを求めてきます。
そういったことができる人が評価されます。
いまの社会の一員として、わたしはそれを声高に否定することはできません。
だけど「そのように自分で人生をコントロールできるという考え方自体、一種の思い上がりではないか?」とも思うわけです。

ただできるかぎり健やかに生きる、いまの自分を生かすなにかに感謝する。
ひととき自分の呼吸を静かに感じてみる。
その先に不思議なつながりが、響き合いが生まれてくる。
本来の人間らしさとはそういう営みの中にあるのかもしれないとあれから13年たったいま、改めて思います。

わたしにとってMAMEHICOとは、その、言うなれば「人間性の回復」といった大きな目的のために愚直に頑張っている、稀有な場所。
そんなふうに感じます。

これからもこの場所でよい風を感じながら、よい時間を持っていきたいです。