連続ドラマ「ノッテビアンカ」のこと⑩vol.4-1

こんにちは。MAMEHICOスタッフの原幸子です。
年明けからM=HicoでYouTube連続ドラマ『ノッテビアンカ』を紹介しています。
劇中では、九重マイコ役を演じています。
普段はカフェスタッフとして、東京と桐生を行ったり来たりしています。

この作品を通して、私は「自分を受け入れることの難しさ」と向き合うことになりました。

Vol.4 Act.1 。マイコはマサシの家の家政婦として働き始めますが、ある日突然、姿を消します。
心配した周囲は彼女の実家を探し、少しずつ彼女の家庭事情が明らかになっていくというくだりです。

この回で、私個人的に印象的だったのは、セツオとケンタのキャッチボールのシーンです。
借金を背負っているとわかったケンタに、セツオが言います。
「ヒトは迷惑をかける生き物なんだ。だから気にしちゃダメだ。そのかわり、他人のことも許せ」
その言葉に、私は胸がチクリと痛みました。
私はずっと、誰にも迷惑をかけずに生きなければいけないと思っていたからです。
自分の弱さや至らなさを、できる限り隠しながら生きていかなくちゃいけないんだと思っていたのです。
穴だらけの自分を認めたくなくて、ひたすら埋めようとしていました。そんなこと無理なのに…。

自分の欠点が気になるから、他人の小さな欠点にもつい目がいって、指摘したくなる癖が私にはあります。
そんな自分に嫌気がさして、ますます自己嫌悪に陥る。
そんなことをずっと子供時代から繰り返してきたんです。
でも、セツオは「そんなんじゃだめだ」と、はっきりと言葉にしてくれました。

「迷惑をかけてもいい。そのかわり、他人のことも許す」
それができれば、もっと楽に生きられるのかもしれないのかな、と。

2021年夏、私は突然「連続ドラマを撮るから幸子も出てよ」と井川さんに声をかけられました。
「お芝居なんてできません」と断ると、井川さんは笑いながら言いました。
「できないの知ってて声かけてんだから。いつもの感じでやってくれればいいよ」
「いつもの感じ?」ってなんだろう。そう思いながら、私は引き受けました。

ところが、台本を読んでみて驚きました。
そこにいたのは、私とはまるで違う「マイコ」という人物だったのです。
彼女は私が理想とするような女性ではなく、抜けていて、図々しくて、素直になれない女性です。

「これ、全然私じゃない。」
そう思って臨んでいたので、撮影していてもマイコが好きになれませんでした。
でも、回が進むにつれて、奇妙なことが起こりました。

撮影でセリフを口にすると、
「ちゃっかりしてるマイコって、さっちゃんそのものだよね」
「笑顔で失礼なこと言うマイコって、さっちゃんそっくり!」
とスタッフから言われるようになったのです。

「えっ!? 普段の私って、こんな感じなの!?」
自分では無意識にやっていたことが、回を重ねるごとにカメラの前ではっきりと映し出されました。
そこに映っていたのは、自分が思っていた「私」ではなく、周囲が見ている「私」だったのです。
それに気づいたら急に恥ずかしくなって、撮影を辞めたいと泣きました。
井川さんは、「あっそう。辞めたいなら辞めたらいいね」としか言ってくれません。

でも、あるとき視聴者の方から「登場人物で一番マイコに共感できます」というコメントをもらえたんです。
自分では「最悪」と思っている「マイコ」を、「共感できる」と言ってもらえた。
そんな体験は初めてだったので、それが嬉しくて、「辞めずにもう少し続けたい」と井川さんに申し出ました。
「そういう短絡的で悪意のないところがマイコそのもの」と井川さんに呆れられました。

人は迷惑をかけるし、完璧じゃない。
迷惑をかけないようにと必死になっていた私は、自分にも厳しすぎたのかもしれないと、撮影を通して思えるようになりました。
―― むしろ、私の不完全さこそが、私そのものなのかもしれない。
『ノッテビアンカ』は、そんな新しい視点と、ささやかな希望を私にもたらしてくれた大事な経験です。

『ノッテビアンカ』に出演してからの私は、自分のへんてこりんな部分を、チャーミングだと思える努力を日々しています。

 

連続ドラマ「ノッテビアンカ」
全8話(vol.1〜8 Act.1,2,3/24回)
vol.4 Secret Act.1 こちらから
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