続けることで育っていく

みなさん、ごきげんよう。MAMEHICOの日野です。

銀座のお店では、『脱走兵と群衆』をロングラン上演として育てていくつもりで動いています。
2025年9月に初演を行ってから毎月公演を続け、すでに3回の舞台を終えました。

そのたびに、少し手を加えたり、ばっさりシーンを落としたり、場面の流れを調整してみたり。
劇中音楽を別の曲に差し替えてみることもあります。
次の公演では、照明がまったく別のものに変わります。
当日がどんな雰囲気になるのか、いまからわくわくしています。

ベストを目指さず、モアベターで。
だからこそ、毎回新しい発見やおもしろさがあります。

ロングランに挑むというのは、「完成」を目指すというより、「続けながら直していく」という姿勢そのものだと思っています。
それは、カフェの毎日の営業のやり方と、まったく同じです。

毎日お店を開け、お客さんを迎え、コーヒーを淹れ、ケーキを焼く。
はじめての連続だったことも、続けることで身体に馴染み、自然とルーティンになります。
その中で、「ここはこうしたほうがいいな」「もう少しこうしてみたらおもしろいかも」と思える瞬間が増えていきます。
続けているからこそ気づける、小さな積み重ねです。
カフェでは、一見同じことを繰り返しているように見えても、毎日まったく違う日々です。

たとえば、いまお出ししているアップルパイ。
手作りのパイ生地は、レシピを同じで作っていても、ひとつひとつの仕上がりが微妙に違い、やわらかさや伸ばしやすさが変わります。
りんごの個体差によって切り方を変えたり、それによって火の入り方も変わる。
狙いを定めていても、ソテーの火入れ具合やカラメルの色づきは、毎回少しずつ違います。
その違いに気づき、工夫しながら整えていくことが、手仕事のおもしろさであり、続けることの価値です。

お客さんも毎日違うので、会話やご注文の内容も同じ日はありません。
その瞬間瞬間に合わせて動くことで、お店は生きた時間になります。
だからこそ、日々の積み重ねが大切で、「ここはこうしたら喜んでもらえるかも」という工夫や発見が生まれるのです。

『脱走兵と群衆』の舞台もまったく同じです。
同じ場面を重ねながら、「ここは削ろう」「ここは変えてみよう」と手を入れ続けていく。
止めずに動かし続けることでしか、たどり着けない形があるのだと思っています。

一方で、同じ演目でも、観に来てくださるお客さんや会場の空気によって、反応はまったく変わります。
演者やスタッフは同じことをしているはずなのに、毎回ちがう時間が生まれる。
その一回ごとの手応えがあるから、また次の公演へ向かいたくなるのだと思います。

カフェも舞台も、わたしにとっては同じ地続きの仕事です。
だから『脱走兵と群衆』も、いつものMAMEHICOの延長のような気持ちで続けています。
劇場でお会いできたら、きっとその感じが伝わると思います。
わたしはうそがつけないので(笑)、本当にそう思っています。

ぜひ、『脱走兵と群衆』を観にいらしてください。
その日だけの特別な時間を、一緒に味わいましょう。

 

音楽劇「脱走兵と群衆」
2025年12月7日(土)
マチネ 開場12:00 /開演13:00
ソワレ 開場17:00 /開演18:00