手をかけ、守るということ

こんにちは。MAMEHICO紫香邸スタッフの原幸子です。
私は東京に暮らしながら、群馬県桐生市にある紫香邸でカフェの営業をしています。

紫香邸との出会いは、MAMEHICO制作のドラマ『ノッテビアンカ』のロケ地探しがきっかけでした。
井川さんが偶然この家を訪ね、「ここを残しながら使っていけたらいいね」と言った、そのひとことで物語が始まりました。

昭和8年に建てられた紫香邸は、伝統とモダンを融合させた和洋折衷の木造建築です。
建てたのは腕の良い大工さんだそうで、大きな地震のときも瓦ひとつ落ちなかったと聞きました。
長く住まいとして使われ、のちに骨董店さんとして親しまれ、そして今、私たちMAMEHICOがカフェとして引き継いでいます。
初めて訪れる方は「まるで文化財のよう」と驚かれますが、私たちが目指しているのは文化財保存ではありません。
人が集い、食卓を囲み、笑い合える生きた家を目指すこと。それが紫香邸の願いです。

古い家は風を通さなければすぐに傷みます。
先日の大雨では雨漏りが起き、瓦屋さんに修理をお願いしました。
瓦の下地が傷んで穴が空き、漆喰を塗り直し、雨樋も交換しました。
こうして手を入れながら守ることが、この家に息を吹き込む大切なことだと思っています。

私は東京から通いながら、掃除をし、料理をし、庭の手入れをしながら、少しずつこの家と暮らしを整えてきました。
季節ごとに光の入り方が変わり、木々の香りも変わる。そういう光景に出くわすたび「この場所を生かしていきたい」と強く思います。

紫香邸を通じて、たくさんの方々とも出会いました。
出会いの中で摩擦もありましたし、大きな気づきもありました。
自分の弱さや未熟さに向き合うことは度々ですが、そうした関わりが、私を育ててくれているのだと感じています。
私は小さい頃からピアノひとすじだった名残でしょうか、何でも一人で抱え込む癖がありました。
けれどこの場所にいるうちに、人に頼ること、関わり合うことの大切さを学びました。
紫香邸は、そんなふうに人と人が一緒に育っていける場所でありたいといまは思っています。

とはいえ、この家を続けていくことは決して容易ではありません。
お客様が少ない日もあり、ため息をつく日が続くこともあります。
それでも、「灯りを消さない」と決めた以上、開け続けることが私の務めだと思っています。
どんな日でも、誰かがふと訪れたとき「開いていてよかった」と思えるように。
だからこそ、今回のクラウドファンディングを始めたのです。

維持には費用も手間もかかりますが、それ以上に「この場所をもっと多くの人に知ってもらいたい」という想いがあります。
古い家は壊すのは簡単です。でも、一度壊してしまえばもう戻すことはできません。
手をかけ、使いながら守っていくことでしか、受け継げないのです。
人の手と心が重ねられていくたび、この家はなにかを返してくれるようにも思うのです。
そういう瞬間に立ち会うたび、ここで働く意味を実感します。

紫香邸を守ることは、過去を保存することではなく、人と人が出会い、関わりながら生きた文化を次の世代へ手渡すことなのです。

どうかみなさんも、この場所の未来に力を貸してください。
MAMEHICO紫香邸を、一緒に育てていけたら嬉しいです。

 

【紫香邸をみんなで守り育てたい】
クラウドファンディング立ち上げます。