【20th】双方向で育てるもの

みなさま、こんにちは。MAMEHICO東京メンバーの上原靖代と申します。 
2005年の7月、カフエマメヒコが三軒茶屋にできる時から、オープニングスタッフとして働きはじめたのをきっかけに、15周年を越えたあとあたりまで、お店に立たせていただきました。
MAMEHICO20周年を迎えるにあたり、自分なりに昔を振り返っています。 

9月に入り、ワタシの拠点である軽井沢では朝晩は20℃。
虫の大合唱に包まれて眠りにつき、朝は涼しい風に目を覚ます。秋の気配がぐっと深まってきました。MAMEHICOを辞めて、早いもので5年になります。

MAMEHICOでは、開店当初から、いろいろな『〇〇ヒコ』イベントがありました。
ナツヒコ、アキヒコ、アサヒコ、それにハタケマメヒコ。

その中でもとりわけ私が印象に残っているのが『タダヒコ』です。
その『タダヒコ』、今年はなんと10回も開催されると聞いて、遠くから驚いています。

そもそも『タダヒコ』とは、井川さんが「働く≒お金」という関係を問い直そうと始めた企画です。
11月23日、勤労感謝の日に、お手伝いスタッフを公募で募り、MAMEHICOでの飲食代はすべて無料にする。

「勤労を尊び、生産を祝い、国民がお互いに感謝し合う」という日に合わせて、「お金をもらうことだけが仕事ではないのでは」という問いを投げかけたのです。

実際、世の中には「お金をもらう仕事」ばかりではありません。
お金をもらわなくても、お金を生まなくても、仕事と呼べるものはたくさんあります。
たとえば、地域の公園を掃除する、病気の家族を看病する──それらは報酬がなくても、社会を支える大切な仕事です。
むしろ、そうした目に見えない働きのほうが多いのではないか、と気づかされます。

『タダヒコ』は、そうした根本的な問いを、カフエという場で問い直そうという取り組みでした。
その発案に、当時の私たちスタッフは全員で目を丸くしながら、「えーーー」と不安混じりに当日を迎えたのを覚えています。
やったことのない挑戦には、いつだって勇気がいります。
とくに身近な人ほど反対意見を口にするものです。

けれども、自分の感覚を信じて振り返らずに進んだ先に、思いがけない景色と出会えることもある。
『タダヒコ』も井川さんの強い牽引力で、グイグイと引っ張って今に至ります。

『タダヒコ』のような取り組みは、提供する側が一方的に「無料でふるまう」だけでは成り立ちません。
お客さまにも「その気持ちを受け取って楽しむ」、なにかしら「受け取ったものを返す」といった関わりがあって成立すると思うのです。
そういう双方向の関係をひときわ大事に育ててきたのがMAMEHICOなのだと、開店当初から、ずっと中心メンバーとして働いてきたワタシは思います。
提供する食べ物や飲み物以上に、その関係の方を重要視してきたのが井川イズムなのです。

MAMEHICOで過ごした年月は、私の飲食人生のほとんどを占めています。
長く働く中で、考えの基盤をつくってくれたのは、MAMEHICOであり、井川さんでした。

一方的にメニューを提供するだけのお店が増える今だからこそ、お店とお客さんの双方向の関わりは、大きな問いかけになると思います。
そのきっかけとなる『タダヒコ』が、今年もまたうまくいくことを、遠くから心より応援しています。

ワタシもこの先、もっともっとシワ深くなっていい感じのおばあちゃまになった時に『タダヒコ』のお手伝いに参加できたら、、、と理想を夢に。

 

2025タダヒコ@MAMEHICO銀座
10/2(木)〜6(月)
11/20(木)〜24(月)