みなさま、こんにちは。MAMEHICOの坂本智佳子です。
このたび、MAMEHICOが制作する舞台作品「cinemusica(シネムジカ)」を、7月6日(土)にMAMEHICO銀座で上演します。
「cinemusica」とは、小芝居・音楽・映画の名シーン──この3つの要素を組み合わせた舞台作品です。
それぞれが独立して進むパラレルワールドのような物語が、やがてひとつに重なり合っていく構成となっています。
小芝居・音楽・映画と聞くと、「ミュージカルのようなものかな?」と思われるかもしれません。
けれど、cinemusicaはまったく異なります。
それらの独創的な絡み合いが、新しい舞台体験を生み出しています。
これこそが、cinemusicaの大きな魅力です。
とはいえ、そもそも「カフェでどうやって世界観をつくって舞台をやるの?」と不思議に思われる方もいらっしゃるでしょう。
実際、この舞台の設定は、今日で店じまいとなる古い小さな映画館です。
私たちが上演するMAMEHICO銀座は、ふだんは喫茶営業をしている場所であり、舞台装置の整った劇場とはまったく異なります。
限られた空間と時間のなかで、どうやってcinemusicaの世界を立ち上げるかは、大きな課題です。
たとえば、美術面では、舞台装置の一部として「書き割り」が用いられています。
書き割りとは、舞台の背景をベニヤ板などの平面に描いて設置する、舞台美術のひとつです。
通常は、遠近感や奥行きを出すためにリアルさを追求し、あくまで背景として静かに存在するものです。
しかし、cinemusicaの書き割りは一味違います。
持ち運びや建て込みがしやすいように軽量素材で手づくりされ、背景としてだけでなく、舞台袖の役割も兼ねるなど、限られた空間のなかで多機能に設計されています。
さらに、書き割りの絵は、額縁がわざと少し歪んで描かれていて、微妙な錯覚を与えます。
私がこの書き割りを初めて見たとき、リアリティの中にどこかフィクションを感じました。
このユニークな発想は、美術も担当する井川さんのアイデアです。
日常のカフェ空間に、そっと物語の世界を呼び込むような仕掛けになっています。
また、cinemusicaは、一度つくったら終わりという固定された作品ではありません。
お客さまの反応や、そのときの空間の特徴を受けて、井川さんが毎回台本や演出を見直して、進化し続けています。
それも含めて、cinemusicaの世界は、移ろうものなのです。
たとえば、3月に行われた神戸公演では、脚本が大幅に改訂されました。
その新たな展開にあわせて、シンガーソングライター・入日茜さんが新曲を書き下ろしてくださいました。
入日さんの音楽は、物語の背景音ではなく、登場人物の感情を代弁するもうひとつの言葉のように聞こえます。
言い換えれば、cinemusicaは、観るたびに変わる、生きている舞台です。
その変化を含んだあり方もまた、MAMEHICOらしいと思っています。
そして、ジャンルの垣根を越えることで、むしろ物語がまっすぐ届くという、逆説的な仕掛けも面白いのです。
7月の上演を、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。

cinemusica
2025.7.6
開場12:00 /開演13:00
開場17:00 /開演18:00
MAMEHICO東京・銀座にて