【20th】おおらかなまなざし

みなさま、こんにちは。MAMEHICO東京メンバーの静美千子と申します。

私が最初にMAMEHICOを訪れてから12年は経つが、いまだに「MAMEHICOはどういうカフェなの?」という質問に、うまく答えられない。
檸檬ケーキが美味しいとか、穏やかな空気で居心地がいいとか、カンボジアプリンが美味しいとか、カフェだけどステージがあるとか、語れるディティールはたくさんあるけれど、それでは説明にはなっていないと感じる。

印象に残っている「MAMEHICOらしさ」を思い返してみると、10周年パーティーのことが真っ先に浮かんだ。
パーティーではMAMEHICOに関わった懐かしい顔にたくさん会えたのだが、その中に驚く顔があった。
エジリさんというおじいさんだ。

エジリさんとは、元有名定食屋の料理人だった人。
定食屋の閉店と共に職を失い、なぜかMAMEHICOにやってきて居座った結果、オーナーの井川さんにマメヒコPart3という新しい店を作ってもらうことになったのだが、店のOPENから2年も経たずに突然失踪…という事件を巻き起こした嵐のような人だ。

当然だが、エジリさん失踪後、マメヒコPart3の存続は危うくなり、それでも踏ん張ってマメヒコ飯店に生まれ変わったというバタバタ劇は、当時はそこまでの内情はわからなかったが印象深かった。

このエジリさんがパーティーにやってきて、ニコニコと笑って「いやあ、月日というのはあらゆるものを洗い流すね」なんて言っていた。
井川さんに「お前が言うなっ!」と全力で突っ込まれても、ニコニコと「新しい仕事を探してるんです。若い女の子と働くのっていいよねえ」なんて言っていて、井川さんも当時の店員さんたちもお腹抱えて笑っていて、あのときの惨状を知っている人たちも、もうただただひたすら笑っていた。

うまく言えないけれど何というか。
人に迷惑をかけてはいけません、なんて言われるけれど、あんなにひどい迷惑をかけた人がケロッと現れて、みんなで大笑い出来るなんて、なんかすごくいいなと思った。

当時で、エジリさんが失踪してから3年半くらいだったと思う。
笑えるようになるだけの月日が経ち、笑えるようになるだけ他にもいろいろな事件があり、それでも皆が集まって笑えるって、うまく言えないけれど、すごくいい。

エジリさんは「長居すると迷惑になるから帰るよー」と言った。
井川さんは「あれ以上の迷惑はないからっ!」と全力で突っ込んだ。
結局、エジリさんはパーティーの最後までいた。
これが、MAMEHICOなんだと思う。

人は完璧ではない。失敗はする。
したり顔で語った話が間違っていたりする。
良かれと思ってアホなことをしでかしもする。
でも、それが人間なんだよね。

そんな人間たちが、出会ったり、行き違ったりする。
これが生きているということで、また出会ったときは、生きていることを喜びあって。
そういう人間たちを受け止める場が、MAMEHICOなんだと感じている。

これからも井川さんは、新しい出会いと別れ、予想もつかない事件に巻き込まれながら、それでも前に進んでいくのだろう。
MAMEHICOという場を必要としている誰かのために。
そして私も、MAMEHICOという場所があることを心の拠り所として、今日も救われているのだ。