こんにちは。MAMEHICO東京スタッフの飯塚友美です。
私はほぼ毎日、三軒茶屋店で働いています。
秋になり、今年もカンボジアプリンの季節がやってきました。
カンボジアプリンって、名前だけ見ても、どんなプリンなのかさっぱりわからないですよね。
実は「カンボジア」というのは、かぼちゃの語源なんです。
ポルトガル人が中南米のカンボジア経由で日本にかぼちゃを伝えたことから、「カンボジアの瓜=カンボチャ」と呼ばれるようになりました。
その響きが面白くて、MAMEHICOでは毎年、秋のかぼちゃプリンをカンボジアプリンと呼んでいます。
キッチンでは気合いを入れて、大きなプリンを何台も焼きました。
ところが、期待に反してまったく注文が入らないんです。
困り果てて井川さんに相談しました。
「カンボジアプリンのポスターを作ってください!ポスターがないと売れません!」
すると井川さんからスタッフ宛てのメッセージが届きました。
「商品写真のポスターがあれば売れるなんて、そんな安易なことで人の気持ちが動くと思いなさんな」
そうして送られてきたのが──カンボジアプリン選挙のポスター。
えっ?選挙って?どういうこと?と、私の頭の中はハテナでいっぱいになりました。
プリンの上に添えるのは、これまで定番の生クリームでした。
ところがここ数年、リコッタチーズが選択肢に加わり、スタッフの間でもお客さんの間でも、どちらが好きかで意見が分かれるようになっていました。
そこで、リコッタチーズ派と生クリーム派に投票してもらい、得票数の多いほうが来年のカンボジアプリンに採用される──そんな選挙をやろうというのです。
つまり、来年からはもう選べなくなるというわけです。
驚いたことに、そのポスターを貼った日から、プリンの注文がどんどん入るようになりました。
「選挙やるんですか?」「どうやって投票するんですか?」と、お客さんも興味津々。
かぼちゃを切って、蒸して、プリンを焼いて、カラメルを焦がしながら、私たちは「この選挙、どうやってやる?」と話し合いを始めました。
「投票箱を置いたらどうかな?」「エピソードも一緒に書いてもらおう」「インスタで投票できたらいいかも!」アイデアは出るけれど、現実的にはなかなか難しい。
そんな中、神戸のしげちゃん(店長)が冷静にひとこと。
「ただでさえプリンの仕込みが大変なんで、余計な企画はやらんでいいと思います。スタッフはカンボジアプリンのクオリティ優先でいきましょう」
うっ…たしかに。私たちはお店のことで手一杯。
楽しいことをやりたいと思っていても、実際には余裕がなくて、現実的に小さくまとまってしまいます。
本気でみんなを巻き込むような企画は、なかなか気が乗らないのです。
そんな私たちを見て、井川さんが言いました。
「だったら動画とネットで選挙をやろう。選挙日は11月3日。お店でも、ネットでも、誰でも投票できるようにすればいい。リコッタチーズ派と生クリーム派で討論会を撮影して公開しよう」
えー!楽しそう!やってみたい!胸が躍りました。
くだらないことほど本気でやるのが、井川さんのいいところなんです。
忙しいと言っていた神戸のスタッフも、撮影のためだけに新幹線で銀座へ。
公開討論会の司会は、日曜会のおっくんが務めることに。
常連のお客さんたちも「手伝うよ!」と駆けつけてくれました。
みんなで集まって笑って、盛り上がって、お客さんもスタッフも関係なく同じ熱の中で楽しむ。
でも冷静に考えれば、プリンの上にどっちを乗せるかという、ただそれだけの話。
けれど、そこに本気で向き合って、みんなが動いて、笑っている。
その光景を見て、改めて思いました。
私が初めてMAMEHICOを訪れた日から変わらない、この自由で遊び心のある空気が、やっぱり好きだなと。

カンボジアプリン選挙2025
投票日は
2025年11月3日 文化の日です。



