🍎 有楽町の喧騒を離れて:隠れ家カフェ「MAMEHICO 銀座」へようこそ
「有楽町から銀座にかけてのこの界隈は、古くから劇場や映画館が立ち並ぶ、歴史ある賑やかなエリアです。 柳通りに面した細い入口の奥、控えめなエレベーターを上がると、ほら、そこ。 そこがあなたが探している、知的な体験を約束するイベントカフェ「MAMEHICO 東京・銀座」です。 さあ、秘密の空間に着きましたよ」
今回、この隠れ家カフェからご紹介するのは、奥深いアップルパイの世界です。
■ 世界を股にかける「アップルパイ生地論争」
「東京のアップルパイは、なぜこんなにもパリに影響されているのか!」 ――常連客ミッチー氏のこの不満こそが、今回の議論の火種でした。
イギリスのアップルパイは「食べられない棺桶」だった
私たちが「アップルパイ」と呼ぶこの英語圏のデザートの起源は、実にユニークです。初期のイギリスでは、パイの外側の生地は「コフィン(Coffin:棺桶)」と呼ばれていました。 これは中身(フィリング)を保存し、焼くための容器**としての役割が主であり、生地は食べずに中身だけをほじくって食べるのが主流だったのです。
「折りパイ」か「練りパイ」か!? 現代の生地論争
現代のパイ生地の違いは何でしょうか?大きく分けて二種類あります。
- 「パフペイストリー」(折りパイ): フランスや日本で主流。バターを挟み込み、何層にも折り込んで作るため、サクサクと軽く、繊細で美しいのが特徴です。
- 「ショートクラスト」(練りパイ): アメリカやヨーロッパの主流。バターを粉に混ぜて練って作るため、生地が分厚く頑丈で、素朴な歯ごたえと家庭的な温かみがあります。
ミッチー氏の主張は、日本のパイが繊細な折りパイ生地ばかりで、アメリカが主流とする素朴で簡単なショートクラストの魅力を見失っている、というわけです。
あなたが今食べているその一切れは、フランスへの憧れが詰まった「タルト・ポム」の血を引いているのかもしれません。
■ 青森りんご/武士の再起と温暖化の試練
アップルパイを構成する最も重要な要素、「りんご」。その物語は、意外にも日本の近代史と深く結びついています。
武士の誇り、りんご畑に
現在主流の西洋りんごは、明治時代、富国強兵策の一環としてアメリカから導入されました。この新しい作物を支えたのは、ほかでもない職を失った旧士族(元武士)たちです。彼らは誇りを胸に、新たな産業としてりんご栽培に情熱を注ぎ、日本のりんご文化の礎を築きました。
現代の試練/赤さを守るための過酷な労働
しかし、現代のりんご農家は地球規模の新たな課題に直面しています。それが、温暖化による「着色不良」です。
りんごは寒暖差によって赤く色づきますが、秋が十分に冷えないと美しく染まりません。そのため、農家は膨大な労力をかけて「摘葉(てきよう)」と「見回し」を行います。
- 摘葉(てきよう): 実全体に日光が当たるよう、一枚一枚手作業で葉を取り除く。
- 見回し(みまわし): 実の裏側にも日が当たるよう、向きを手作業で変える。
――この過酷な労働を知る時、スーパーで並ぶ真っ赤なりんごは、単なる商品ではなく、農家の方々の汗と、自然との闘いの結晶に見えてきます。
■ 「知的な一切れ」が待つ秘密のカフェ
MAMEHICOで過ごす時間は、単に美味しいコーヒーとアップルパイをいただく時間ではありません。
それは、世界の食文化、歴史、そして日本の農業の未来に思いを馳せる「知的な体験」です。パイ生地の層に世界の歴史を重ね、りんごの酸味に武士の再起のドラマを感じる――。
有楽町の喧騒を離れた秘密の空間で、あなたもこの哲学的な一切れを体験してみませんか。
次にアップルパイを食べる時は、ぜひその生地の厚さや、りんごのルーツに想いを巡らせてみてください。きっと、その味わいは全く新しいものに変わるはずです。




2025年11月29日 5:08 PM