みなさん、こんにちは。MAMEHICOの星野美津子です。
私は桐生に住んでいて、いまは紫香邸にほぼ毎日います。
紫香邸とは、昭和8年に建てられた築90年の和洋折衷の住宅です。
広くはありませんが、庭もついています。
かつては、もっともっと広いお庭で、池もあり、枝垂れ桜もありだったそうです。
紫の花が香る邸宅にしたいねと、井川さんが紫香邸と名付けました。
その桐生の紫香邸も、オープンしてようやく一年が経ちました。
一日に来るお客さんは、まだまだ少ない紫香邸ですが、それでも一年を通せば、たくさんのお客様に来ていただいたなという実感があります。
さて、今日は、私なりに紫香邸を案内します。
紫香邸は、西側には両開きの玄関、入るとまず右手に洋室、広い楕円のアンティークテーブルがあって、ワイワイとおしゃべりするのにいいです。
そして南に面した長い縁側と庭、広い和室。いまの季節、大きな火鉢のそばで庭を見ながらのんびりするのにいいです。
東側の一番奥は板の間になっています。ここはとても静かなので、ひとりでゆっくり考え事をしたり、読書や勉強やお仕事をするのにいいかも。
どの部屋も、昔のおうちなので、季節や時間帯によって差し込む光線の違いなんかもあって、どれも違った趣なのです。
そこがいいので、初めて来られるお客様には、まず紫香邸の中全体を見て、好きな席を選んでいただくことにしています。
家の中を見て回るみなさんが仰るのは、「実家みたい」「おばあちゃんちを思い出す」ということです。
「おじゃましまーす」とか「よろしくお願いします」と言って玄関を上がる方も多く、ほんとに誰かの家に遊びに来たような感覚なんだと思います。
初めは硬い表情だったお連れ様が、懐かしい空間で美味しいものを食べると、帰る頃には素敵な笑顔になっていることもよくあり、私は嬉しくなります。
一年通して、いちばん印象に残っているお客様は、実際にこの家で生まれ、育ち、結婚するまで住んでらしたという御婦人です。
瞳がきれいで可愛らしいその御婦人は、いまは横浜に住んでいるそうですが、息子さんが「紫香邸になった」ことを知って、連れてきてくれたのです。
なんとも懐かしそうな表情で、ひとつひとつ思い出話をしてくださいました。
「私がここに住んでたときは、手前の洋室が自分の部屋でしてね、ピアノが置いてあってよく弾いたわ」
「お嫁に行ってからもね、子どもたちを連れてよく遊びにきてたのよ」
「守ってくださってありがとうございます」
私の頭の中にも、はっきりと浮かんで熱いものが込み上げてきました。
私達は、「建物」を引き継いだのではなく、誰かの「想い」を引き継いだのだと感じたからです。
ある日、あの瞬間、「素敵なおうちだから、ここを買い取って、みんなで集まれる場所に作り変えよう!」、井川さんはその場で即決し、みんなと1年半かけて直しながら紫香邸になりました。
私達にこの邸宅を売ってくださった骨董屋さんの「三友居」黒島さんも、足繁く通ってくださっています。
井川さんが「想い」を綴った文章が紫香邸にも並んでいます。
偶然来たお客様が、井川さんの「想い」を読んで感動し、メンバーになってくださった方もいました。
不思議な「ご縁のリレー」は「想い」というバトンで、繋がっているのです。