こんにちは!大学を中退してMAMEHICOで働いている池田玲菜です。
今日は、私がMAMEHICOに関わるきっかけになった最初の最初のお話をしようと思います。
高校3年生のとき、母に誘われて、なんとなくオペラのコンサートに出かけました。
それは母の知り合いであるオペラ歌手の増原英也さんが出演しているものでした。
私自身はオペラに特別興味があったわけではなく、正直「まあ、付き合いで行ってみるか」というくらいの気持ちで参加したんです。
会場に着くと、各席には束になったたくさんのチラシが配られていました。
開演までの時間、何気なく手に取ってパラパラと眺めていましたが、その中で突然、指先にザラっとした感触が伝わる一枚のチラシが目に留まりました。
それが「ゲーテ先生の音楽会」というタイトルのMAMEHICOのチラシでした。
そのチラシは、他のものとは明らかに違いました。
普通のチラシは薄くてツルツルした光沢紙が使われていることが多いのですが、このチラシはマットで少し厚みのある、まるで本に使われるような紙質。
何とも言えない独特な手触りに思わず「なんだろう、この感触?」と気になりました。
こういう紙を選ぶって、きっと相当こだわっているんだろうな、とその時なんとなく感じたんです。
さらに目を引いたのが、そのデザインと文章でした。
派手な色使いや出演者の写真は一切なく、むしろとてもシンプル。
だけど、その中に井川さんという主催者の企画への思いが書き込まれていて、まるで私に直接話しかけているような温かさがありました。
正直、その時の私には、内容についてはぼんやりとしか分からなかったのですが、普通の宣伝チラシとは明らかに違う「人間味」を感じたんです。
そんなチラシをじっくり眺めていると、出演者の名前の中に、増原英也さんの名前を見つけました。
「あれ?増原さんが関わってるの?オペラと全然違う雰囲気の企画なのに」と思い、不思議な気持ちになりました。
オペラの華やかなステージに立っている増原さんが、カフェの企画に出演しているなんて、全然想像していなかったんです。
その日は特に深く考えることもなく、「ゲーテ先生の音楽会」のチラシだけを持ち帰りました。
でも、不思議とそのチラシのことがずっと頭の片隅に残っていたんです。
後日、母から「ゲーテ先生の音楽会」について詳しく聞く機会がありました。
井川さんが作っているその企画は、単なる演劇でも音楽会でもなく、そのどちらでもあるような独特の世界観が特徴だと聞いて、ますます興味が湧いてきました。
さらに母を通じて、増原さんから「ゲーテ歌劇団」という活動を紹介してもらいました。
それは「ゲーテ先生の音楽会」から派生した、若い女性たちを集めたグループだったんです。
そして、どういう経緯か「よかったら歌劇団に参加してみない?」とお誘いをいただきました。
当時の私は、まさか自分がその活動に関わることになるなんて思ってもいませんでした。
でも、あのチラシがきっかけで「これってどんな世界なんだろう?」と興味を持ち、少しずつ新しい世界に踏み出すことができたんです。
MAMEHICOでは今も様々なイベントに合わせてチラシや店内冊子を配布しています。
そのデザインはもちろん、井川さんが一つひとつ手がけています。たかがチラシ、されどチラシ。
あの時の私のように、一枚の紙が誰かの心に引っかかることもあるかもしれない。
そう思うと、その一枚には計り知れない力があるんだなと感じます。
私もMAMEHICOで働きながら、そんな一枚一枚に込められた思いを受け取る側から、今は少しずつ作る側になってきました。
あの頃の自分が感じたように、誰かの心にふと残るものを届けられるようになるのが、私の目標です。
まだまだ未熟ですが、あの時のチラシのように、人の心に触れられるような仕事がしたいと思っています。