こんにちは、MAMEHICO神戸・御影スタッフの水野知帆です。
私が銀座のMAMEHICOにはじめてお客さんで入った時、その店内の椅子が「ちゃんとしてる」ことに驚いたんです。
なんていうか、既製品の椅子じゃなくて、人の手がこもった椅子であることは、何も知らない私にも伝わったんですね。
その後、縁あってMAMEHICOで働くようになって、その椅子は長崎の家具工房で作られたものだと知りました。
2022年8月、オープン準備の真っ最中。
井川さんからシゲさんに「ある椅子を見てきてほしい」と頼まれたそうです。
井川さんが気になっている椅子が、神戸の家具屋さんのショールームにあるとのこと。
シゲさんは早速そこへ訪ねたものの、目当ての椅子は見つからない。
ショールームのスタッフは、「あいにくこの椅子の展示はここにはありません。
メーカーの長崎の工房を訪ねれば見られます」とのこと。
井川さんにその旨、伝えると、井川さんは「じゃあ、長崎に見に行こう」ということになったそうです。
何でも直接確かめないと気がすまない井川さんらしい話です。
実際に工房に出向くと、目当ての椅子が並んでいて、さらに座面の生地も何種類もある。
椅子はセンダンという木材で作られた美しいデザインで、スタッキングもできて、なにより軽い。
井川さんもシゲさんもその椅子が気に入ると、今度は座面の生地選びです。
その中から井川さんが選んだのは、シゲさんの予想よりずっと派手な色でした。
「シックな空間を作り込んでるのに合うのかな?」
椅子は受注生産のため、納期は3ヶ月半かかるとわかりました。
のこり一ヶ月を切ってるオープンには到底間に合いません。
それでも井川さんは「この椅子でいこう」と。
「ほかの椅子を探してもこの椅子を超えるものが見つかるとも限らないし、到着するまでの間だけなんとかすればいいわけだから」
お店は無事にオープンしたのですが、肝心の椅子は届かない。
椅子がないとカフェの営業ができないのですが、そこで井川さん、一体どうしたかというと。
一番安いパイプ椅子のレンタルを探し、営業で使うことにしたんです。
「だってどうせ数ヶ月の辛抱なわけだから。体裁気にして中途半端な椅子を揃えるより、とことん安いほうがいい。いや案外、このパイプ椅子が気に入って、長崎の椅子はいらないってなるかもよ(笑)」
お客さんの反応は、
「あらあら、この空間にパイプ椅子を揃えるなんて、その意外性がおしゃれね」
「このパイプ椅子ってアンティークなの?素敵」
その後、無事に椅子は届いて、いまは当たり前に使っているわけですが、こだわりと抜くところのバランスが絶妙だと私は感じます。
MAMEHICOはとことんまで妥協を許さないっていう感じじゃないんです。
「まぁ、いんじゃないの」って抜いたところがあるので、「こんな私でも働けるかも」と続けてこられてるんです。
お店には、まだまだ知らない物語が沢山眠っています。それを知るのがとても楽しい。
シゲさんはもちろんのこと、当の本人である井川さんが聞かせてくれるたくさんの裏話は、いつも発見と笑いに満ちています。笑
若い私にとってそんなエピソードを聞くたびに、MAMEHICOがより特別な場所に感じられますし、私はその物語をお客様に伝えたくなるんです。
ぜひお店に来て、この椅子に座ってみてくださいね。