昔当たり前にあったものがなくなっていくのは寂しい。
神戸を散歩していると、美しいお屋敷街が建売住宅へと変貌していく様子が目につきます。
熊本の山肌に、ずらりとソーラーパネルが並ぶ光景を見たとき、なんも言えない悲しい気持ちになりました。
進化だかなんだか知りませんが、大義名分にかこつけて、美しさが損なわれてしまっていることに、誰もなんとも思わないのかと、ただただ悲しいのです。
果たして。
時代とともに生活は良くなっているのでしょうか。
かえって悪くなってるんじゃないの?と感じることも多い。
桐生の紫香邸は瓦屋根なので雨漏りします。
直そうと思って大工さんに相談すると、もう同じ瓦を焼くヒトがいないんだよと嘆いていました。
ひとまず似たものをあてがって修理しましたが、やがてはその瓦もなくなるのでしょうか。
自分で瓦を焼かないといけなくなる時が来ますね。
ああ、不便です。
紫香邸は旧き良きものを残すという思いで始めました。
それに賛同するヒトがいっぱいいて、クラウドファンディングもたくさん集まりました。
だけどおかしいなと思うのは、働いているスタッフが、エネルギーについてはあまり気にしてないところです。
誰もいない部屋でも電気ストーブ、ガスストーブをつけっぱなし。
都会の暮らしが染み付いていて、エネルギーを節約しようという気がそもそもないんだろうと思います。
お客さんを迎えるために部屋を暖かくしておこうという配慮だというかもしれませんが、そんなことは屁理屈です。
古い家でカフェを始めるということは、お客さんにもそれなりに不便を味わってもらうことしかありません。
快適を求めるなら、そもそも古い家でカフェなんてやらなければいいし、来なければいいのです。
紫香邸はクーラーを設置する気がありません。
日本で一番暑い街としてニュースにもなっている桐生で、クーラーを設置しないのはどんなことになるのか。
わかりませんが、もともとついてなかったのだから、それでなんとかやれていたんだろうと思う。
そのかわり、お客さんには涼を取ってもらおうと、かき氷をやってみたいです。
最近の流行りは、寒いほどにクーラーを効かせたお店で、丼いっぱいのかき氷を食べてる写真を撮ること。
あれでは体は冷えすぎるので、どうかしちゃってます。
紫香邸にカーテンはありません。
そのかわりにあるのが木の雨戸。
朝の雨戸開けは、かなりの重労働です。
でも開けた途端、鳥の声と朝の空気が部屋の中に飛び込んできて、清々しい気持ちになります。
紫香邸の水回り、トイレやお風呂、台所は、ひととおり改築しました。
お店をやるうえで不潔な水回りはよくないからです。
スタッフも寝泊まりするので、お風呂も作りましたが、追い焚き機能はつけませんでした。
東京の新しいマンションでは追い焚き機能は当たり前についてますが、紫香邸ではみんな次々にお風呂に入れば良い。
昔の生活で一番苦労したのはエネルギーです。
お湯を沸かす、煮炊きをする。
エネルギーの問題で、日本は戦争にも突入しました。
そういうことを考えるきっかけに紫香邸がなればいいと思っています。
なんとなく古民家を改築したおしゃれカフェなんていうファッションで紫香邸はやりたくないのです。