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浅煎りの酸味と深煎り

第三回 | 焙煎編
浅煎りの酸味と深煎り

焙煎の深さと、甘さの関係。砂糖はごまかしか、それとも香りの呼び水か。豆の状態から、ひとさじの意味を考え直します。

アイコの主張

微糖派

砂糖は、角を取って味を丸くするための呼び水。

浅く煎った豆は、酸味が立ちますよね。珈琲の実は、もともと果物ですから、浅く煎るほど、酸っぱさのもと――クロロゲン酸やクエン酸、リンゴ酸ね――が残る。その尖った酸を、砂糖をひとさじ足して、丸くしてやる。浅煎りと砂糖は、相性がいいんです。砂糖というのは、甘くするためというより、角を取って、味を丸くするためのもの。そんなふうに思っているんです。

じゃあ、深煎りはどうか。深煎りはそれ自体に甘みがあるから砂糖はいりません。でも、ここがアイスのむずかしいところなんです。香りというのは、温かいほどよく立ちのぼるもの。冷たく冷やしてしまうと、せっかくの甘い香りが、どうしても奥に引っ込んでしまう。

浅煎りの酸味と深煎り アイコの主張

そこで、ひとさじが効いてくる。スイカに塩をほんのひとつまみ振ると、かえって甘さがはっきりする。あれと同じなんです。塩を味わいたいわけじゃない。スイカの甘さを、引き立てるために振る。深煎りに足すひとさじも、それなんですね。甘くするためじゃなくて、冷たさで奥に引っ込んだ香りを、ふっと前に呼び出すための、呼び水なんです。

砂糖はごまかしだ、と思われがちです。それは人工的なシロップのイメージがあるからです。けど深煎りの甘い香りを、冷たいまま一番高く立たせるには、ほんの少しの本物の砂糖が、いちばんの呼び水になる。足すか足さないか、じゃなくて、その一杯がいちばんいい香りになるのはどこか。そう考えると、ひとさじの意味が、少し変わってくる気がするんです。

浅煎りの酸味と深煎り アイコの主張

レイコの主張

無糖派

深煎りは、それ自体がもう甘い。

MAMEHICOのアイスコーヒーは深煎りです。豆を深く煎ると、二つのことが起きるんです。アミノ酸と糖が反応して香ばしくなる反応――パンの耳やお肉の焼き目と同じものね――と、糖が熱で分解されて甘く香る反応。プリンのカラメルを思い浮かべてください。この二つが、苦味の奥に、ふわっと甘い香りを生む。深く煎るほど、その香りは強くなる。だから深煎りは、もうそれ自体が甘いんです。砂糖を足さなくても、苦味の向こうから甘さが立ちのぼってくる。

MAMEHICOのアイスコーヒーは、その深煎りを濃いめに淹れて、氷で一気に冷やしています。煎るほどに生まれた甘い香りを、急いで冷やして閉じ込める。そこへさらに砂糖を入れると、せっかくの香りの上に、別の甘さがかぶさってしまう。香りで甘いものに、わざわざ砂糖を重ねることはない、というわけです。

浅煎りの酸味と深煎り レイコの主張

「冷たいと甘さを感じにくいんじゃないか」と言われそうですね。たしかに、冷えると舌が感じる甘さは鈍ります。でも深煎りの甘さは、舌で感じる甘さじゃなくて、鼻から伝わってくる甘さなんです。だから冷たくても、ちゃんと立つ。そこが、砂糖の甘さとは違うところなんですね。

甘くないと物足りない、と思い込んでいるだけかもしれません。MAMEHICOの深煎りを、一度なにも足さずに飲んでみると、苦味の奥に、甘い香りが隠れている。それに気づく楽しみまで砂糖でふさいでしまうのは、ちょっと惜しい気がするんです。

浅煎りの酸味と深煎り レイコの主張