声にならない声を

ヨシノの音楽劇『脱走兵と群衆』が、9月と10月に銀座で上演されます。
すべてヨシノひとりによる音楽劇です。

それ自体、初めての試みでいろいろと大変なんですけど、今回の上演から、チケット代、鑑賞料についても大きな方針転換をすることにしました。

それは、「鑑賞料も、予約もいらない」と謳うことです。
ふらっと来て、ふらっと観ていってもらう。そんな形にしたいんです。
(実際には、ふらっと10階に上がってくるヒトなんていないことはわかってます)

でも、もともとヨシノは、はじめから「こうあるべき」なんてありませんでした。
「瓢箪からヨシノ」とはまさにこのことで、だからこそ、枠にとらわれず、自由に、やりたいことをやっていきたい。
そのために、新しいやり方をあえてヨシノは選んでいくことにするんです。

これから先、「cinemusica」や「面白可笑ひこ」といったシリーズも、順次このスタイルにしていくつもりです。
いずれは、MAMEHICOのすべての演目が「予約なし・鑑賞料なし」で成り立つ──そんなMAMEHICO独自の形をつくりたいと考えてるのね。
そもそも「瓢箪からMAMEHICO」なんだし。

もちろん、まったくの無償にするわけではありません。
ボクたちは金持ちの道楽でやってるんじゃないからね。

いまの演劇や音楽ライブのチケットの売り方、そもそも公演の打ち方は、大いに課題があるし、このままでは先細る一方だというのは、2年半やってみて、もう腹のそこから理解したんです。
それは箱を持って自腹を切ってみて、やっと腹落ちしたことです。

新しいやりかたとして導入しようとしているのが、「ロングラン」と「応援コイン」という仕組みです。
「ロングラン」はその名の通り、ひとつの公演をずっとやり続けることです。
そして「応援コイン」というのは、あらかじめコインを入口やネットで購入してもらい、観劇の満足度や応援の気持ちに応じて、お帰りの際にそのコインで応援いただくというもの。

投げ銭とも似てるけど、もっと演者や表現に対して、敬意と応援を伴った形にしたいと考えてます。
(そもそも投げ銭って、「ほらやるよ」って感じがして、失礼な言い方だよなって思う)

将来的には、「応援コイン」をMAMEHICOの会員制度で使われている「豆ポイント」と連動させていきたい。お手伝い班や庭づくり班などでお店の営業を手伝ってくれてる活動(これもほんとに感謝ですよ)と、劇やライブのたとえば出演や鑑賞が、「豆ポイント」で相殺されるような仕組みにしていきたい。

家賃や人件費のような「日本円」で支払わなければならない固定費については、サブスクリプション制のメンバーシップの「おうえん費(月額1,100円、年間10,000円)でまかなえるようにしていきたいと考えてるんです。

応援の気持ちが、経済の仕組みになる──
そんな新しいかたちを、MAMEHICOは目指してるわけ(ずっと言ってるのよ、理解されないけど)。

日本の景気が良かったときに、「あれやった、これやったっていう、おじいさん、おばあさんの自慢ばなし」はもういんだよ。
それをありがたがってるのも、もういい。
要は、これからのヒトたちがどうやって、面白可笑しく自立自活していくか、それを考えるのが、ボクの役割で、それを試す場所がMAMEHICOだから。

お店を長く続けてるとね、
「自分はなんでヨシノを始めたんだろう」
「MAMEHICOやってるけど、最初は、どんな気持ちだったっけ」
ということを忘れがちになる。

そんなとき、ボクは自分の中の「ダイモニオン」と相談します。
(ダイモニオンとは、ソクラテスが語った“内なる神”のような存在のことです)

「あのさ、ダイモニオン、これって本当に、やりたかったことだっけ?」
「最初に、なにを感じてメンバーシッ制にしたんだっけ?」

長くやっていると、どうしてもいろんなことに気を取られて、あれこれ迷走もする。
とくに現場にいるスタッフはなおのことそうです。
でも、それでいいと思ってる。
あれこれ試して、あちこち寄り道して、MAMEHICOはまた最初に戻ってくればいい。

──そんなことで、応援やお手伝いをよろしくお願いします。
そして還元できる仕組みを作っていきます。

 

音楽劇「脱走兵と群衆」
2025年9月15日(祝)
昼の部 開場12:00 /開演13:00
夜の部 開場17:00 /開演18:00