「空水茶屋」ができるまで5

我々の直面したとても大きな課題、それは『珈琲一杯の値段』でした。
井川さんから、例えば1日3万円の売り上げを珈琲だけで上げようとした場合、一杯300円だと100人。一杯3万円だったら1人。さぁ手間暇かけて毎日営業するとなったらどうしますか?

これは悩ましい質問。
接客だけを考えれば1日1人と深〜いお話をするのか?
1日100人にいらっしゃいませ、有難うございました、あとは『髪切った』?
程度の会話をするのか?
この『一杯の珈琲の値段』を決める事は本当に色々な事を考え、決めなくてはなりませんでした。
安くて使いやすい人気店で多くの方々に来てもらいたいのか?
高くてもこの店を愛して存続させてくれる方々に来てもらいたいのか?
そしてそこまで考え出すと、じゃあ実際どんなお客様に来てもらいたいのか?

そしてどんな人には来てもらいたくないのか?

地域のカフェとして地域の人達にどんな立ち位置であり続けるのか?
そこで井川さんから続けて『あと例えば行列が出来た時、常連のお客様には最後尾に並んでもらうの?』などなど色々な理想と現実をどんどん突きつけられました。
そうかぁ、近所の私が小さい頃からお世話になった組合長の正一さんに並んでもらうの?
それもなぁ。。。

これはミヒャエルエンデのモモの話も頭をよぎる事。
多くのお客様が来る繁盛店になる事で友達との会話が減っていく様なお店で良いのか?
丁寧な関係を続けながら、でも従業員を巻き込んで過酷な経営を続けていくのか?
本当に難しい課題でした。

そこで我々はまず地域のお店や都内の有名店など、ありとあらゆるカフェ巡りする事に決めました。
するとだいたい都内の価格帯や地域の価格帯も見えてきて、何となく成り立つお店の値段が少し見えてきました。
そしてみんな本当に頑張って経営されてるんだなぁ、色々ずっと工夫を続けてるんだなぁと色々と感じる事ができました。
しかし本題の『珈琲一杯の値段』を決める事はまだまだ先の話でした。

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