【福岡】山門の棟上げ

みなさん、こんにちは。
MAMEHICOスタッフの草ケ谷美香です。

福岡のお店の、入り口に通ずる山門を建てる。
今回のお店作りで一番壮大な工事をしています。

お店の建物は山の斜面に建っていて、いらしたお客さんには、入口まで続く石段を登って店内に入ってもらいます。
その入口の扉の前に、日本の伝統工法で山門を建てようという計画です。

今回のお店の工事をお願いしている大工の加賀田さんは日本の伝統工法を守り、後世に伝える活動をされています。
九州中に散らばる、同じ思いを持った大工さんたちのネットワークがあり、大きな工事をするときは集まって助け合いながら工事を進めたり、そんな現場を通じて勉強をして工法を守り伝えているんだそうで、今回も各地の大工さんたちが集結。

木材には糸島で育った杉の木が採用されていて、中でも柱や桁といった建物の構造部分に使う杉の木は人の手で製材した丸太材を使います。

手斧(ちょうな)と呼ばれる鍬型の斧を使って木の表面を削り、亀甲模様をつけた丸太材は柱の上に横に渡される桁に。
槍鉋(やりがんな)と呼ばれる、文字通り槍のような形の鉋で木の表面を削った艶やかな丸太材は柱に。
3ヶ月という長い時間をかけたその準備が終わり、木材が現場に運び込まれ、棟上げがありました。

今回は「石場建て」という、石の土台の上に柱を立てるやり方で建物が建つので、その土台の石には塩と米を盛り、清酒をかけてお浄め。
大工さんたちと関係者一同で二礼二拍手一礼で工事中の無事を祈願し、御神酒をいただいてから工事が始まりました。

釘やネジを使わずに木材同士を組み合わせて建てていく、1300年前から残る伝統工法で建物の枠組みが作られます。
手間暇と時間のかかる、この伝統工法は守り伝える勉強会の場では取り組む機会があっても、時間とお金の制約のある実際の建築現場では採用される機会はほぼないのだそう(例え寺社仏閣の建築や改修の現場だとしても!)。

各地から集まった宮大工さんたちも
「こんな現場は今後の大工人生でももうないかもしれないです。本当にいい機会をいただきました。大工冥利に尽きます」
と話してくださいました。

工事が始まると、クレーン車で大きな丸太を釣り上げては運び、少しずつ木と木を組み合わせる作業が続きます。
あらかじめ開けたほぞ穴にほぞを合わせ、大きなハンマーで叩いて組まれていきます。

一歩間違えば大事故につながるということが素人の私にもわかるくらい、少しのズレで木はミシミシと音を立てて、現場は終始緊張感に包まれていました。
でも、その中でも大工さんたちはどこか楽しそうに作業をされていたのがとても印象的でした。

情報や技術があっても、それを発揮できる実際の現場があるかどうかはまた別の話。
令和のこの時代に、このやり方で建てたという事自体にとても意味があるんだということを、大工さんたちのその誇らしげな表情から教えていただく時間でした。

棟上げでは人数が必要だったので、10名ほどの大工さんたちが携わっていましたが、丸2日かけて棟が上がり、集まった大工さんたちはまた各々の地元に戻っていきました。
今は地元の大工さんが残り、その後の屋根を貼る作業に移って、工事は続いています。

無事に棟上げが終わった証として棟木には吹き流しが取り付けられていて、風に吹かれています。
それを見るたびに、たくさんの大工さんたちの思いがそこに詰まっていることを感じてじーんとします。

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