皆さんこんにちは!今回は記事の前半で工事に使われている伝統工法や道具についてご紹介し、後半ではMAMEHICO福岡・糸島の「棟上げ式」の様子をお伝えしていきます。棟上げ式とは、家屋の守護神や大工の神様を祀って建物の造営を無事に行えたことに感謝するとともに、最後まで工事の安全を祈る儀式のことで、上棟式とも呼ばれます。棟上げ式は2024年9月26日に行われました。
MAMEHICO福岡・糸島では、カフェの建物の入り口に小屋を建て、お店に来たお客さんはそこを通って入店します。今回はその小屋(山門)の棟上げ式を行いました。
朝8時ごろにMAMEHICO福岡・糸島を訪れると、関係者の皆さんが集まって話したり、木の板や丸太に細かい作業をしたり、材木を搬入したりしているところでした。山門の棟上げ式はお昼から始めるとのこと。そのためここからはしばらく、山門に使う材木に施された伝統工法や道具のこだわりについてお伝えしていきます。
MAMEHICO福岡・糸島の柱などに使われている材木は、釘を使わない「追掛大栓継ぎ(おっかけだいせんつぎ)」という伝統工法で継ぎ合わせています。材木の表面に「穴屋鑿(あなやのみ)」という深い穴を掘るための昔ながらの鑿を使って、手作業で穴を開けていきます。部分ごとに穴の大きさや形は異なり、継ぎ合わせたときに強度が高まるように穴の配置を工夫しているものも見受けられました。開けた穴には木の栓を通して材木同士を継ぎ合わせます。
材木同士を継ぎ合わせると、このような形になります。繰り返しますが、釘は1本も使っていません。
角型の栓の方が見た目がよく、昔ながらであるとのことですが、力が均等に分散される丸栓が使われることもあるのだそう。こちらがその丸栓です。
釘を使わずに木と木を継ぎ合わせる「追掛大栓継ぎ」は、西暦1200年ごろから見られるようになった略鎌が発展したもので、現在の形状になったのは1400年ごろと言われています。600年以上前から使われている伝統工法を、令和の現代にMAMEHICO福岡・糸島の建物を作るのに使う…。異質なものが組み合わさって、融合し、とても面白いものが出来上がりそうですね!
大工さんが持っていた3本の穴屋鑿は五分・八分・一寸四分と刃の長さがそれぞれ異なっており、用途に応じて使い分けています。面白いなと思ったのは、道具箱が手作りの木製だったこと。金属の道具箱では道具が錆びてしまうとのことで、湿気を取るために道具箱の中には木の削り節も入れてありました。鑿の鞘も1つ1つ、ご自身で作られたとのことです。さすが大工さんですね!
続いて、「槍鉋(やりがんな)」をご紹介します。槍鉋は古くからある工具で、なんとその形状は1300年前から変わっていないのだそう。この鉋で木の表面を削ると、木目が浮き出てきます。下の写真をご覧ください。なんと美しい模様でしょうか!
槍鉋は力を入れやすいように柄が長くなっており、また両刃であるため押しても引いても削れます。大工さんが刃を入れると、どんどん細長い削り節が出てきて、あっという間に木の表面がツルツルになりました。
筆者も特別に槍鉋を体験させていただきました!やり方としてはまず木の表面の出っ張ったところに槍鉋の刃を当て、ナナメに入れます。最初は太く、厚く大まかに削ってから、次第に薄く細く仕上げていきます。鉋を動かすときに力を入れすぎると深く切り込んで表面がガタガタになってしまいますが、逆に力を入れなさすぎると鉋が進まず、削ることができません。そのあたりの絶妙な力加減を体得していくことが、上手にツルツルに削れるようになるためには必要であると感じました。
室町時代中期以降、もっと便利な「台鉋(だいがんな)」が登場すると、槍鉋は次第に使われなくなっていきます。現在は電気鉋が主流になり、ますます槍鉋の出番はなくなってしまいました。しかし、電気鉋を使えば確かに効率は良いですが、槍鉋で何日もかけて1つ1つ手作業で地道に進めていくことで、木の表面がより繊細で美しくなりますし、そのぶん柱に使われている材木などへの愛着も湧いてきます。そこに何を求めるかによって適切な鉋は変わってくるのでしょうが、手間暇をかけることをいとわず、よりよいものを求めるMAMEHICOにとっては、槍鉋はぴったりの道具です。
さて、それではお昼すぎに行われた「棟上げ式」の様子をお伝えしていこうと思います。
棟上げ式では神様にお祈りをするため、まず柱を立てる土台の部分に塩とお酒と米をお供えします。
それから大工の棟梁の加賀田さんが祝詞を上げ、みんなで御神酒をいただきました。工事が最後まで安全に行われるためにも、これらの儀式は重要です。また関係者の皆さんで一緒にこの儀式を行うことで、一体感が生まれると思います。一連の流れを観察しながら、昔から儀式には「神様や大いなる存在にお祈りする」側面と「コミュニティを形成する人同士のつながりを深めたり、一体感を高めたりする」側面があるのではないかと感じました。
その後1本目の柱がクレーンで吊るされ、山門を建てる場所まで運ばれてきました。最初の柱が建てられる、記念すべき瞬間を皆さんも見届けてください。
真っ青な空に浮かぶ、1本の柱。クレーンによって徐々に下に降りてきました。
ゆっくり、ゆっくりと降りてくる柱。それはとても厳かな瞬間で、まるで神様が天から降りてくるかのような雰囲気が漂っています。
居並ぶ人びとが静かに見守る中、柱は無事に土台の上に降りてきました。ご覧ください。先ほど塩とお酒と米がお供えされていた石の土台の上に、しっかりと柱が乗っています。この1本目の柱を皮切りに、これから次々と材木が組み立てられ、さらに屋根を作り、やがて山門が完成することになります。山門については今後の記事で詳しくご紹介していきます。
今回は前半部分で工事に使われている伝統工法や道具についてご紹介し、後半部分で棟上げ式の様子をお伝えしました。
600年以上前から使われている伝統工法「追掛大栓継ぎ」や、1300年以上前から形状を変えずに使用されている道具「槍鉋」など、MAMEHICO福岡・糸島には多くの伝統的な技法・道具が使われています。個人の邸宅などではなく、カフェの工事にこれらの伝統を取り入れることに意味があるのです。個人の邸宅であれば一部の人しか楽しめませんが、誰でも来ることができるカフェに伝統を取り入れることで、みんながその良さ、素晴らしさ、奥深さにふれることができます。
皆さんもぜひ、完成後のMAMEHICO福岡・糸島を訪れて、お店の内外に散りばめられている数々のこだわりを肌で感じてみてください。
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