日々のこと

うちもたかが小っぽけなカフェだから。一人で頑張っても、しょーがないよなと思うのね。頑張ってできないと、イライラするでしょ。あのイライラが身体によくない。自分の身体にも、周りの身体にもよくない。だから、イライラするよりも、目の前のヒトたちと楽しく過ごす工夫のほうが大事だと、ボクは思ってるのね。
楽しく過ごすには「面白い」が大事だよ。「面白い」ってのは「意外」ってことだとボクは思います。こうすると、こうなります。そんなのは「面白くない」わけね。「普通こんなことしないよー」、「誰もそんなことしませんよー」、それが「面白い」の。
これからの時代、世界はますます混沌としてくるでしょう。その中で生きていくのは大変だけれども、極夜を生きる術を身につけたほうがいい。高度経済成長、バブル経済、明るい時代なら、みんなと足並み揃えていればよかったかもしれないけど、極夜になったら、自分のしたいように生きることだ。
誰でも深いとこまで付き合うと、良い心、子供の心を持ってるのがわかる。極夜では、なかなか子どもの心では生きられないから、悪い心で生きようとする。すると自分のことが嫌いになる。
なにかうまくいかないことが起きると、自分が悪いんだ、自分が悪いんだって責めちゃう。
あなたそんなに悪くないよって、ボクは言うね。もっと子供の心でやりたいようにやれれば、自分に自信が持てる。そうすれば、自分さえよければいいとか、他人を蹴落とすとか、悪い心は消える。
極夜になっても、みんなが「面白可笑しく」生きられる、そういう場所を、ボクは使命としてね、作らないといけないなと思っているってわけ。(2022年10月号)

あのね。「面白い」の語源って知ってる?教えようか?日本書紀の神話のなかにその語源が書いてあるのよ。ボクはこの神話が好きでね。「面白い」が世界を救う。
そういう、話なんだよ。
素戔嗚尊(すさのおのみこと)って神様が再三にわたって悪いことをしてた。それを見かねた天照大神(あまてらすおおみかみ)が、怒って天の岩戸を閉ざして隠れちゃった。
太陽神である天照大神が洞窟に隠れちゃったから、世界は真っ暗。極夜だね。
それでみんな困っちゃった。
そんで残された神々が、こりゃやばいから、なんとかしなくてはって考えた。なかでも知恵の神である思兼神(おもいかねのかみ)に作戦を考えてもらった。
どんな作戦かっていうとね。思兼神は口を開いた。みんなは固唾を飲んで聞き入った
「まず芸能の神様である天宇受売命(あめのうずめのみこと)にですね、岩戸の前に来てもらいます。そして、思い切ってえいやっと、オッパイを出してもらうんです。えぇ。思い切って。そして、できることなら、これはまぁ、ご本人の意志も確認してですが、下の方も脱いでもらっちゃう。そして岩戸の前で踊ってもらうんです」
神々はそのあまりの名案ぶりに興奮した。興奮しすぎて、鼻血を出してる神様までいる。
「それで、悲しんでいた神々は、それを見てはしゃぐのです。はしゃいで、楽しい雰囲気を醸し出す。その空気が岩戸の中に伝わっていく。
そうすればですね、あの天照大神のことですから、きっと出てくるでしょう。そのとき、丸出しの天宇受売命は、天照大神にこう言うんです。
『あら、天照大御神さん。私達がどうして楽しそうに踊っているか知りたいですか?それはね、あなたより尊い太陽神がいらっしゃったので、みんな喜んで、はしゃいで踊ってるんですよ』。
負けず嫌いの天照大神のことですから、「なにっ」と身を乗り出すはずです。その瞬間を狙って、岩戸の脇で待機していた力の神、天手力男神(あめのたぢからおのかみ)が、天照大神の手を取って岩戸から引きずり出すんですっ。どうです、このアイデア」
実にくだらない作戦だけどね(笑)、やってみたら成功したってわけ。
天照大神が、暗い岩戸から出てきた瞬間、神々の顔(面)がはっきりと白く光った。
この神話が、「面白い」の語源だっていうんだね。もともと神様ってのは、くだらないものなんだ。好きになっちゃうね。(2022年10月号)

こんなことをボクに言ってくれる年配のヒトがいました。
「かつての日本にはね、地域の活動もあったし、商店街もあってね。あなたたちが今しているようなことが、社会として当たり前だった時代があったのよ。
そういう意味で良い時代だったと思うわ。地域には子供もたくさんいて。お年寄りもその中に混じって。
商店街も、学校も、みんな自由だった。今に比べたら、みんなお金は無かったかもしれない。でもそれが当たり前だったし、貧しいなんて思いもしなかった。
みんな温かくって、子供はニコニコしてるだけで褒められたものよ。ルールなんか無くって、誰かを管理したりすることもなかった。
いつごろだったか。社会は大きな力で動かされるようになってしまって。そのことに気づいたときは、もう私ひとりがどうこうできる時代ではなくなっていたの。社会もヒトも、お金で動かされてる。そんな風に感じたのね。
だから、今の時代。それもこんな都会の真ん中で、時代の流れに抗って、それを諦めず、新しいものを取り入れながら地道にこんなことを続けてる若いヒトたちがいるってことに驚いたし感動したわ。だから、応援したいのよ」
少しずつですが、共感してくれてるヒトが増えています。といっても、ほんとに地道で時間がかかります。みんなで爪に火を灯して、頑張っていくしか無いです。(2023年2月号)

ボクはかつてテレビ番組を作っていたディレクターだったんです。それでテレビプロダクションも経営してました。ところがテレビに失望してしまって、カフェを始めたっていう経緯がある。
テレビは好きだったし、できるだけ誇りの持てる仕事をしたいなと励んでました。ボクも若かったからね、随分と青臭かったなって思います。
テレビというのはそもそも虚像です、「嘘」です。四角い箱に映像が流れてるだけですから。その嘘を支えているのは、細部における「リアリティ」なわけで、それをないがしろにしては、視聴者は離れてしまう。頑張ってやってるヒトがいるのを知ってますが、実際は、随分とないがしろになってしまってる気がします。スポンサー企業の広告を、まるでニュースのごとく流したり、政府の思惑どおりに、視聴者を印象操作して誘導したり。
ボクは自分がカフエ マメヒコを始めるならば、その「リアリティ」をとても大切にしたいと始めたんです。(2023年2月号)

MAMEHICO総集編より

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