引分戸と白暖簾

みなさん、こんにちは。
MAMEHICOスタッフの田中朋美です。

紫香邸は、静かな住宅街にひっそりと佇む、昭和初期の風情を残した古民家です。
門扉を抜け、前庭からすぐ玄関が現れます。

真っ白な暖簾をくぐる。
玄関の引き戸を開ける。
たたきで靴を脱いで、棚に置く。
家の中に上がる。
この一連の流れは、MAMEHICOのお店では、紫香邸でしか見ることはないでしょう。

紫香邸は昭和初期の邸宅を改修した古民家なので、お店なのに家の造りをしています。
ですから、お客さまには玄関で靴を脱いで上がっていただきます。
人の家に上がるかの如く、思わず「お邪魔しま〜す」とおっしゃる方が多いのですが、その気持ち、とってもよく分かります!

「玄関は家の顔」と、よく言いますね。
人が最初に入る場所であり、その家の第一印象を決める場所でもあります。
門や庭を含め、最初に足を踏み入れる入り口が汚れていたり雑然としていたりすると、それだけで「中も汚れているのかしら?」という思いが生まれてしまいます。

紫香邸の玄関・入り口は、「素敵ですね」と気に入ってくださる方が多く、写真を撮られる方もよくいらっしゃいます。
そのときはうれしく、ちょっぴり誇らしく感じます。

その玄関の特徴的なことは、「引き戸」であること。
引分戸(ひきわけど)と言って、左右両側に開閉することができます。
襖に障子、ガラス戸に雨戸…、昔の日本家屋では引き戸は当たり前のものでした。
紫香邸の扉という扉もお手洗い以外は、全て「引き戸」です。

引き戸には、空間を広く使うことができるというメリットがあります。
玄関が引き戸になっていることで、多くの来客があっても外靴を置くスペースを確保することができたのでしょう。
さらに、引分戸になっていると間口が広くなり、より立派に感じられます。
紫香邸の玄関はまさにそれ。
立派な家の顔になっているなぁと感じます。

また、個人的にお気に入りなのが、引き戸を開けるときの「ガラガラガラガラ」という音と手に伝わる振動です。
ガラス戸で安全性には少々欠ける部分があったり、今は高価なものになっていたりする玄関の引き戸ですが、繊細が故に、自然と優しく丁寧に開け閉めをする自分がいます。
お客さまもきっとそうでしょう。ゆっくりと片方だけを開けてみたり、両手で左右に開けてみたり。
上がり框に足をかけていただくまでの短い間でも、お客さまとの様々なコミュニケーションが生まれて楽しいです。

そして、象徴的なものが、「暖簾」です。
暖簾を出す、下ろすことで、店のOPENとCLOSEを示しています。
つまり、この暖簾がかかることで、初めて紫香邸は邸宅からお店になるのです。
紫香邸の暖簾は「白暖簾」です。
砂糖を多く使用するということから、菓子商が使用するようになった白色の暖簾。
清潔感があるということから広く食べ物を扱う飲食店でも使用されるようになったそうです。

「暖簾を守る」という言葉があるように、今日も一日おもてなしの心でお客さまをお迎えしよう!という緊張感をもって、暖簾を出し、今日もお客さまに満足していただけたかなという安堵の気持ちを感じながら、暖簾を下ろす。
簡単な動作に見えて、蔑ろにしてはいけないことだなと心に留めています。

引分戸に白暖簾。
紫香邸の顔である玄関を、グッと引き締める大切な役割を担っています。
家なのかお店なのか。
他のお店では味わうことのできない感覚を、きっとお楽しみいただけるはずです。

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