みなさん、こんにちは。MAMEHICOの星野美津子です。
不思議なご縁で、私が生まれ育った桐生にMAMEHICO紫香邸ができて1年が経ちました。
この1年間、お客様との交流を通じて、ふるさとを新たな視点で知る楽しさを感じています。
今日は、その桐生について、私の思いをお話ししたいと思います。
桐生は山と川に囲まれた自然豊かな街です。
東京から北へ約100キロ、関東平野の北限に位置し、織物の街としても知られています。
「西の西陣、東の桐生」と称され、江戸時代から多くの人々が交わり、さまざまな都市と深いつながりを持っていました。
そのためか、桐生には「自由で多様性のある町民気質」があると思っていて、それが桐生の大きな魅力だと私は感じています。
私の育った頃の桐生は、人と人が支え合い、自然の中でのびのびと暮らす温かい街でした。
家族や親戚、地域の人々との交流も盛んで、学校や商店街、祭りなど、街全体がつながっている感覚がいつもありました。
桐生川で遊び、桐生ヶ丘公園で過ごし、夏の桐生祭りや秋のえびす講の賑わいに胸を躍らせた日々は、私の心の原風景となっています。
桐生の街にはさまざまな飲食店があり、どこも賑やかでした。
喫茶店も数多く、その中で特に好きだったのは中心街にあった純喫茶「新星荘(しんせいそう)」です。
少し大人っぽくて素敵な雰囲気の喫茶店で、小さい頃は母に連れられ、中学生になると友達同士で行くことが誇らしく感じられました。
ミルクセーキや生メロンジュース、プリンアラモード、ナポリタン、カツサンド、あんみつ、お雑煮など、和洋折衷の手作りメニューが本当に美味しかったのを覚えています。
上品で温かい接客のマダムが迎えてくれ、地元の常連さんもふらりと訪れる憩いの場であり、街の灯火のような存在でした。
高校を卒業して私も桐生を離れたころ、街が明らかに寂しくなっていくのを感じました。
帰省するたびに、昔の賑わいが失われていくことに心が痛み、「大切なものを守りたい」という気持ちが芽生え始めました。
けれど、無力な私の力では「どうにもならないよな」という諦めのような気持ちもありました。
いまから数年前に、ふとしたきっかけですが、東京の渋谷でMAMEHICOというカフェに出会いました。
初めて訪れたとき、なんだか懐かしい空気を感じました。
一見、普通のカフェのようなのに、さまざまなイベントが行われていました。
思い切って参加してみると、たとえば手作りの演劇をやっていて、お客さんも店員さんも一緒に歌ったりしました。
なんとも不思議な体験でしたが、子どもの頃にあった桐生のお祭りに似たような感覚がありました。
東京の真ん中にも関わらず、MAMEHICOには失われつつあった桐生の気風が流れていると感じて親近感が湧いたのです。
MAMEHICOは、人と人のつながりを大切にし、自由を尊重する温かい雰囲気がありました。
足繁く通っているうちに、店主の井川啓央さんの理念がしっかりあって、それに基づいて形作られていることを知りました。
コロナ禍で世の中がさらに寂しくなりつつある中、「自分にもふるさと桐生で、できることをしたい」という思いから、桐生、宮本町の古民家をMAMEHICOとして運営していくご縁が生まれました。
それが紫香邸なのですが、私もその運営に携わることに決めました。
紫香邸は、ふるさとの価値を未来に繋ぐ場として、訪れる人々とのご縁を深めながら歩んでいます。
2年目を迎えた今、さらに「温故知新」を楽しみながら、桐生とMAMEHICOの魅力を発信していきたいと思っています。