芸能と、人と。

 

一昨日、エトワール★ヨシノのライヴが、無事終わりました。

初めていらした方が半分くらいだったかな。
初めて参加する方に、どう映ったのか、とても気になります。

ヨシノさんのライヴは、ただ座って聴く、というものではなく。

ひとりひとりに、出番を与えるライヴだなぁ、と思います。
バンドメンバーはもちろん。客席で観ているお客さんにまで、みんなに光が当たる。

はじめてライヴにいらしたお客さんが、なぜかステージ上に上がって、得意のサンバを踊ったり。

あちらの方も、初参加なのに、
鉢巻と法被を着て、ステージに上がっている。

今回も、こんな光景を目の当たりにしました。

「ライヴの良し悪しは、客が決める」、と言ってもよいくらい、
お客さんありきで進行していきます。

ヨシノでやっていることは、
日本の伝統芸能に近い文化があるな、と、私は思います。

寄席では、前座で若手の弟子たちの出番を与える。
落語家たちが、その日どの演目を話すかは、会場にいるお客さんをみて決める。
若い人から順番に、演目を決められる。
紙切りのように、お客さんが注文をつけられるような場面もある。

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先日、わたしは渋谷の円山町で行われる、ある大宴会へ参加しました。
三味線を弾くのは、今年で93歳の現役芸者。

来ているお客さんも慕っていて。
「姐さん!円山のアイドル!」みんな嬉しそうに、口々に叫んでいました。
「今年で、39歳ですよね!」と、誰かが冗談を言うと。「あらやだ、セブンティーンよ!失礼ねぇ。」という返し。
みんな、どっと笑う。93歳とは、思えない。あぁ、すごいなぁ。

若い芸者さんたちと舞が終わると、
姐さんが、アドリブで演奏し始めました。

予想外の展開に困りながら、若い芸者衆は、ねぇさんのアドリブに乗っかって。
てんやわんや、振りを思い出しながら、舞う、歌う。

そのうちに、「なんでも弾くから、歌いたい人は歌って!」という、ねぇさん。
そこで、手を挙げたのは、着物を着た高齢の紳士。みんなの前で、短い歌を披露されました。

その後、次の歌い手が現れない。見かねた姐さんは、みんなが知ってる歌を弾き出す。

東京音頭
炭坑節
・
・
・

みんな、手を叩きながら、口々に歌い始める。そのうち、合唱になる。

炭坑節にいたっては、店をまるまる使って、柱を中心に、ぐるりと一周。全員が踊り始める始末。みんな、ほんとに楽しそうなのだ。大合唱で、大笑いしながら、後ろのひとに教えたりしながら。踊って、歌って。

この一連に、わたしは甚く感激してしまったのです。
あぁ、日本人には、古く、みんなが知っている歌、というのがあるんだなぁ。

こうやって、みんなで合唱して、知らない人も一緒になって、笑って、踊って。
こういうことが、楽しい!って思える、民族なんだなぁ。

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その後も宴会は続き、
今度は「投扇興」の時間が始まる。

芸者が、酒瓶と扇子を持ってくる。
「だれか、タバコの箱を持ってないか?」と問いかける。

どこからか、タバコの箱が出てくる。

瓶に、タバコ箱を置いて、
扇子を投げて、タバコの箱を落とす、というゲームだ。

「投げてみたい人ー?」と芸者たちが呼びかける。お節介なおじさんやおばさんが、隣に座っている若者の背中を叩く。

若者がひとり出れば、
「私も、私も!」と、次から次へと若者が出てくる。こうやって、ひとりひとりの出番をきちんと作る。

何度やっても失敗する子
一発で当てる子

扇子の投げ方ひとつに、「人柄」が出る。
人柄が分かれば、客同士が安心して、さらに、会がどっと盛り上がる。

お客が会を盛り立てる。演者は、そのきっかけを作る。
円山芸者のお座敷芸とエトワール★ヨシノは通ずるものがある、と。私は、勝手に思っています。

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かつての花街・円山町。今は、クラブ・ホテル街として、広く知られていますが。下駄を履いた芸者が歩きやすいよう、段差が低く造られた「芸者階段」が、円山町には、今も、ところどころに残っています。

円山町は明治時代から、宿場町として栄えました。関東大震災直前には、100戸以上の置屋と、420名を超える芸者がいたそうです。
しかし、時代の変遷とともに街自体が衰退し、今では、現役の芸者さんはたったの4名だけになりました。

来月、銀座MAMEHICOで行われる和樂会には、円山芸者の若手お二人が来てくれます。
葉月さんと三吉さんです。
お二人とも、若いのに、姐さんの精神を受け継ぎ、しゃんとお仕事をされています。
精神を伝えること、また、受け継ぐことが、どれだけ大変なことか。私も、店をやっていてよくわかります。
(まだまだ半人前なので、大してわかっていない、とも思いますが。)

覚悟を持って、この世界で生きるお二人の姿に、私は、お会いするたび、いつも胸が熱くなってしまうのです。


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MAMEHICO和樂会

失われつつある日本の古典芸能や、文化をもっと気軽に楽しく、本質的にMAMEHICOでは紹介していきたいと考えています。月に一度、ゲストをお呼びして、芸やそれにまつわるあれやこれやを紹介します。

10月の第1回MAMEHICO和樂会で大反響だった円山芸者衆が、再登場です。お正月から節分にかけての花街のしきたりや行事のこと、聞いてみませんか。三味線や踊りも、たっぷりお楽しみください。お正月企画ですので、獅子舞もご用意しました。2023年の初めの厄払いに、獅子に頭を噛んでもらいましょう。

場所 MAMEHICO 銀座
日時 2023年 毎月 第2土曜 夕18:00~(2H) 
第4回和樂会:2023/1/14(土) 18:00~20:00
参加費 5,800円(税抜) ※メンバーは10%引き
https://mamehicoginza.doorkeeper.jp/events/148943