連続ドラマ「ノッテビアンカ」のこと⑯vol.6-1

こんにちは。MAMEHICOの坂本智佳子です。

年明けから、YouTube連続ドラマ『ノッテビアンカ』をご紹介しています。
ドラマでは宝田クミ役として出演もしましたが、実は私、裏方全般を担当する制作のメインスタッフでもあります。
出演は「ちょっとだけ出てみた」くらいの感覚で、根っからの裏方好きです。

このドラマをご覧になった方からは、「どうやって撮ってたの?」とよく聞かれます。
カフェが手がける8話構成の連続ドラマなんて、おそらく、あとにも先にもMAMEHICOだけでしょう。
スタッフもキャストも、全員が素人。
そして何より、お金で動いている人が一人もいません。

それでも成立したのは、井川さんのリーダーシップと、そこに集まる人たちのチームワークのおかげです。
井川さんはいつでも「全部、自分が責任を持つから」と言ってくれます。
だからこそ、「だったら関わってみようかな」と、それぞれが気軽に一歩を踏み出せた。
そうやって、自然にチームができあがっていきました。

私は制作を担当していたので、台本ができあがるとすぐにロケ場所を探し、出演者やエキストラのスケジュールを調整します。
毎回、台本にはひとつやふたつ、「これ、どうやって撮るの?」というシーンが、わざと書かれていたようにも思えます。
でも、考えている暇はありません。まずは動き出すしかない。
場所を探して、人を動かして、撮影の流れをつくっていきます。

出番こそ多くはありませんでしたが、私はほぼすべての撮影現場に立ち会いました。
そうしているうちに、台本を読んだだけで、だいたいどれくらいの撮影時間がかかるのか、見えてくるようになりました。
台本のページ数と撮影時間は、まったく比例しません。

たとえば「桜吹雪の中、泣くまいという笑顔で、クミがゆっくりと振り返る」とあれば、井川監督は納得いくまで何度でも撮り直します。
この一行で、リハーサルを含めて半日かかることもあります。
一方で、6ページにも及ぶ長ゼリフのシーンは「勢いで撮ろう」と、そのまま本番に入ることもあります。

すごいことに、スケジュール通りに撮影できなかったことは、一度もありませんでした。
井川監督は、現場で妥協点を見つけるのがとても上手で、必ず撮りきってくれます。
スケジュールが押すのは、むしろ編集の方です。
何日も朝から深夜まで、同じシーンを繰り返し編集している姿を見たことがあります。
編集が押すと、次の台本が遅れ、キャストのスケジュールが決まらない。
だからある程度は先を読んで、ロケ日や出演者の予定を、先に押さえておく必要があるのです。

Vol.6のタイトルは「Atom」。
登場人物一人ひとりに焦点が当たり、それぞれの“個”が際立っています。
何を感じ、何に揺れているのかが丁寧に描かれていて、私もとても好きな回です。
この回は、フォーカスが変わるたびにロケ地も変わるため、移動も撮影もとても大変でした。
でもその分、印象に残る仕上がりになっています。

ロケ先で、井川さんがこんなふうに話していたことがあります。

「ノッテビアンカは、ひとつの社会的実験なんだよ。素人でも、モチベーションだけで連続ドラマが作れるのか?っていうね」。

まさにその通りで、このドラマは、みんなの“やりたい”という気持ちが集まって、いくつもの奇跡を起こしてきました。

たとえば、群馬県桐生市でのロケのこと。
「築90年の日本家屋があるんだけど、ロケ地にどう?」とある方に声をかけていただき、軽い気持ちで見に行ったのですが、その家の静けさや風格、建物のつくりにすっかり魅了されました。
すると井川さんが、「ここはノッテビアンカのロケ地にはならないかもしれないけど、カフェにはなるかもね」と言い出した。
それが、今のMAMEHICO紫香邸のはじまりです。

また、関西ロケのときには夫婦役のエキストラが必要で、関西在住のしげちゃんとみゆきさんにお願いしました。
おふたりの芝居がとても良くて、井川さんが「この二人なら店をやったら流行るね」と言ったのが、今のMAMEHICO神戸につながっています。

『ノッテビアンカ』を改めて見返すと、人との関係性の中で、作品が“生まれていた”ことに気づかされます。
私自身も、あの長い撮影の日々の延長線上に、今の自分がいると感じています。

あのとき、私たちが手を動かして、心を動かして、一つひとつ形にしてきた時間。
その積み重ねを、ぜひ『ノッテビアンカ』から感じていただけたら嬉しいです。

 

 
 

連続ドラマ「ノッテビアンカ」
全8話(vol.1〜8 Act.1,2,3/24回)
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