見えないところこそ丁寧に

MAMEHICOの料理は、華やかさよりも、確かな味に重きを置いています。
派手な盛りつけや、流行りの食材に頼らず、基本の調味料をどう使うか──それが店の味を決めています。
見た目は控えめでも、心と体にしみ込んでいく。
その味の土台を支えているのが、油、酢、みりん、酒、砂糖、しょうゆ、みそ、塩といった、ごく基本的な調味料なのです。

毎日使う調味料こそが、自分たちの味になるんだと思います。
たとえば、関西で薄口しょうゆに親しんで育ったなら、素材の色や香りを活かした、あっさりした味つけがおふくろの味になるでしょう。
反対に、九州で甘いしょうゆの味に慣れ親しんで育ったなら、コクと甘みのある煮物が、懐かしい家庭の味になるように。

塩は、料理の基本にして、味の決め手です。
MAMEHICOでは、伯方の塩や赤穂の天塩など、安定して品質の高い塩を使っています。
たまには、ゲランドの塩や糸島、能登の海塩など、その土地の海水だけで作られている塩も使います。
日本人は海に囲まれた国に暮らしているからか、塩に含まれるマグネシウムを重視しがちです。
だけど、それを自然塩から無理に摂ろうとするより、日々の食事にひじきやわかめなどの海藻を取り入れる方が、ボクは自然だと思います。
だから海藻もお弁当によく使います。
海藻は食べないのに、自然塩にだけこだわるのは、なんか違うよなと思います。

しょうゆとみそは、香りの軸です。
しょうゆは、木桶で丁寧に仕込まれた弓削田醤油しか使いません。
みそは、冬に自分たちで仕込んだものに、八丁味噌をブレンドして、甘みと酸味を合わせ持つ味にしています。
香りを大切にしているので、しょうゆとみそは途中と仕上げに分けて加えます。
お店で出してるみそ汁も、火を止めてからみそを溶き、「煮えばな」と呼ばれる状態を逃さないようにしています。

甘みには砂糖も使いますが、お弁当では、照り焼きや煮物が多いため、みりんの艶は欠かせません。
本みりんは酒屋で一升瓶で買い、小瓶に分けて、使う分は一度煮切ってから使います。
甘みは、素材をやわらかくし、お弁当の保存性も高めるので、甘いものはきちんと甘くします。
MAMEHICOでは、きび砂糖、上白糖、グラニュー糖などを料理によって使い分けています。
上白糖は少量でもしっかり甘みが出るので重宝しますし、きび砂糖は黒糖のような香りがほんのりと漂い、甘みを立たせすぎず、ふくらみを与えてくれます。
最近は、甘酒を砂糖代わりに使うことも始めました。
試してみたら、案外よかったんです。

酢は米酢を基本にしています。
酸味の立った富士酢、まろやかな千鳥酢、それに柚子やすだち、レモンなど季節の柑橘の酸味も組み合わせて使います。
ほんの少し加えるだけで季節の香りが立ち、味にまろやかさが加わります。
酢の物やマリネだけでなく、煮物や炒め物の仕上げにもひとたらし加えることで、味がきゅっと締まる。
味に奥行きが生まれるんです。

油は「香りが強すぎず、料理を引き立ててくれるもの」を選んでいます。
最近はオリーブオイルが高騰し、以前のようには使いづらくなってきました。
MAMEHICOでは、太白のごま油や圧搾した菜種油を一斗缶で取り寄せ小分けにして使っています。
お弁当づくりに欠かせない揚げ物こそ、冷めてもくどくならない信頼できる油を使います。

MAMEHICOのお弁当は、プロの調理人が作っているわけではありません。
技術がつたないからこそ、ボクたちは毎日使う調味料や材料と、丁寧に向き合いたいとずっと思ってきました。見えないところに気を配る、それがたまにお客さんに伝わってると感じるときがあります。
お店をやっていて嬉しいことのひとつです。

 

MAMEHICO特製お弁当
各店にてご予約承っております。

詳しくはこちらから

このページについてひとこと。この内容は公開されません。

関連記事

RELATED POSTS