ラジオがくれたひとつの扉

こんにちは。MAMEHICO東京スタッフの前島由紀です。

MAMEHICOって、ちょっと不思議で面白いお店なんです。
私がその世界にのめり込むようになったきっかけは、1本のラジオ番組でした。
これは、そんな私とMAMEHICOの出会いのお話です。

最初に訪れたのは、カフエマメヒコ宇田川町店でした。
お店のセンス、ユニークなメニュー、清潔なトイレ、美味しい食事、そしてスタッフの丁寧な対応──そのすべてに感動して、思わず店内をうろうろしていた私に、スタッフのトモちゃんが声をかけてくれました。
そのとき、初めて井川さんのラジオの存在を知ったのです。

さっそく聴いてみたのが、運の尽き(笑)。
あまりの面白さにどっぷりハマり、過去回まで一気にさかのぼって聴き続けてしまいました。

当時の私は、飲食と物販を手がけるお店で中間管理職的な立場にあり、仕事に悩みの多い毎日を送っていました。
そんな中で出会った、井川さんのラジオ。
リアルな飲食店の話、面白可笑しい日常の話、そして生き方や哲学にまで及ぶ深い話に強く共感しながら、
「こんな素敵なお店があるんだ。こんな人のもとで働けたらな……」
と、ぼんやり思いながら聴いていたのです。

当時はまだYouTube配信もなく、どれくらいの人が聴いているのかもわからない時期。
コメントなどの反応も少なくて、井川さんが「こんなの、誰も聴いてないよね〜」とぼやいていたのをよく覚えています(笑)。
それでも夢中になっていた私は、「聴いてますよー!」という気持ちをどうしても伝えたくなって、思い切ってお便りを送ってみました。
それが、ラジオの“向こう側”に踏み出した、最初の一歩だったのかもしれません。

そして次の週、自分の名前でそのお便りがラジオで読まれたのです!
顔から火が出そうなくらい恥ずかしくて、でも、それ以上にとても興奮したのを、今でも昨日のことのように覚えています。

拙く、まとまりのない文章だったのに、井川さんは「つまりさあ、この人、こういうことが言いたいんじゃない?」と、面白おかしく、でも分かりやすく解説してくれました。
「そうそう、そんなことが言いたかったんです──!」
嬉しさとともに、ラジオと“つながってしまった”ことへのドキドキは、今でも忘れられません。

それからしばらくして、コロナ禍に入りました。
世の中が混乱し、何が正解なのか、何を信じていいのか分からなくなる中、ふと思ったのです。
「こんなとき、MAMEHICOはどうしているんだろう?」

そんな想いから、久しぶりにラジオを聴いてみると──
多くの飲食店が助成金を受けて時短や休業を余儀なくされているなかで、MAMEHICOはマスクもせず、毎日営業を続けていました。
しかも、本当にやりたかったことに、挑戦していたのです。

「すごいなあ…」
心の底から、そう思いました。
ラジオを聴いてばかりいないで、自分にも何かできることがあるのでは──そう思って、もう一歩ラジオの“向こう側”へ進んでみることにしました。

やがて、井川さん主催の「いかひこ塾」という会に参加するようになり、少しずつMAMEHICOに関わるようになっていきました。

そんな中、「ラジオの文字起こしをしてくれる人を募集している」という話を耳にしました。
でも私は手を挙げることができませんでした。
パソコンにも不慣れで、タイピングも遅いし、自分にできるはずがないと思っていたからです。
それでも、気になってしかたがありませんでした。

ある日、こっそり井川さんのラジオを聴きながら、試しに文字起こしをしてみました。
時間はかかりましたが、なんとか仕上げることができて──そして、それがとても楽しかった。

その後、少しずつお手伝いさせていただけるようになりました。
最初は複数人で、音声をそのまま文字に起こし、800字程度にまとめるという作業。
上手な方のリライトや校正をお手本にしながら、回数を重ねるうちに少しずつ慣れていきました。
テーマを選ぶ人がいて、私や他の方が文字起こし・リライトを担当し、それをさらに校正して、ようやく井川さんのHPのラジオコーナーにアップされる──そんな流れです。

私は本当によく物事を忘れます。
でも、それが人間らしさでもあると思っています。
だからこそ、何度聴いても「なるほど!」「わかるわかる〜!」と、新鮮な気持ちで共感できる。
ときには胸が痛くなる話題もあるし、思わず笑ってしまうこともある。
この「ラジオの文字起こし」という仕事は、私にとって大切な、大切な存在になりました。
まさに、ライフワークです。

「これは、忘れっぽい私に神様が授けてくれた仕事なんだ!」
大げさでなく、本当にそう思えるのです。

これまでにも、たくさんのラジオがありました。
クルミドコーヒーの影山さんとの「マメクルラジオ」、井川さんの高校時代の友人・石田さんとの「浅チャンネル」、「ラジオ瀬尾さん」、「いかひこ深夜便」──
そして今では、お客さんやスタッフとともに作る「面白ラジオ」や「雑談ラジオ」へと、形を変えながら続いています。

そんな中、ここ最近は少しお休みしていた「天才よち丸ラジオ」が、なんと再始動することになったのです!(笑)
まさかの復活に胸が高鳴り、「またあの時間が戻ってくるんだ…!」と、感動してしまいました。

少しずつ準備が進み、ラジオの世界がまた動き出しています。
また文字起こしができるかもしれない。
そんな期待と喜びを胸に、「やっぱりこの場所が好きなんだな」と、改めて感じています。

今では文字起こしツールも増え、ChatGPTのような便利な技術も登場しました。
それでも、私がこの仕事を通して得た経験と時間は、何ものにも代えがたい宝物です。
また、あのラジオの時間が戻ってきた今、その一端を担えるように。
これからも心を込めて、関わっていきたいと思っています。
そんな思いを込めながら──今日も、この文章を書いています。

 

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