こんにちは!MAMEHICO紫香邸スタッフの原幸子です。
朝晩はひんやりと秋の風を感じるようになりました。
紫香邸のお庭では、南瓜や萩がすくすくと育ち、秋の訪れを告げています。
9月からは、MAMEHICO紫香邸の営業日時を一新し、毎週ミニイベントを企画することになりました。
そのひとつとして、30分ほどピアノを弾かせていただきます。
私は「古き良きものを大事に育みたい」という想いから、東京から桐生へ毎週通っています。
「紫香邸」という場所で、五感を使ってあらゆることを体験していただきたい――。
そんな気持ちでさまざまな企画を考え、そのひとつとして「ピアノを弾こう!」と思いついたのです。
MAMEHICOを初めて知ったのは2015年。今から10年前です。
当時、渋谷にあったMAMEHICOで開かれていた音楽会に、ピアノを弾きに行ったのがきっかけでした。
私は6歳からピアノを始め、音大のピアノ科を卒業しました。
20年間ピアノを続け、各地で演奏活動をしたり、船上コンサートの機会にも恵まれました。
けれど、最初は好きで始めたはずのピアノが、あるときから考えるだけで体が硬直し、吐き気やめまいがするようになりました。
ピアノの上達も止まり、長いこと悩みました。
人と比べ、コンクールや試験といった競争の世界で生きることが、私には合っていなかったのだと思います。
卒業して何年か経ってから、思い切ってピアノから距離を置く生活を選びました。
この選択は、「私にはピアノしかない」という思い込みで演奏活動を続けてきた私にとって、まるで分身を引き離されたような、つらい体験でした。
家族や周囲からも「これまでの時間がもったいない」「練習できない環境に身を置くなんてありえない」と猛反対されました。
それでも紆余曲折の末、MAMEHICOに拾ってもらいました。
とはいえ、そこで「めでたし、めでたし」とはいかず…。
ピアノから離れても体調は相変わらずで、ここからが本当の壁にぶつかることになりました。笑
いろいろなことがありましたが、MAMEHICOに居続けるうちに、自分の中にこびりついていた思考の塊が少しずつほどけていくのを感じました。
私はピアノのせいにして、実は自分の思い込みから逃げていただけだったのだと気づきました。
「こうあるべき」「こうしなければならない」「ミスは許されない」――。
そんなふうに、自分で自分を追い込んでいたのです。
気づいたとき、ふっと肩の力が抜けて、鎧がとれたような感覚になりました。
きっと、自分で自分を追い込んでしまう経験に心当たりがある方は、私だけではないと思います。
もうピアノを弾くことはないだろうと思っていたあの頃。
それがご縁あって、またお客さまの前でピアノを弾く日が来るとは、思いがけないことでした。
やっぱり、少し緊張します。
でも、耳を傾けてくださるお客さまの笑顔や、拍手を一生懸命してくれるお子さん、
「心がほっとしました」と言ってくださる言葉に、私の方が癒されています。
私は、点数で競うことよりも、身近な人や仲良くなりたい人にただ喜んでほしい――
そのことにようやく気づくことができました。
そして、なによりも、幼い頃「ただ好きでピアノを弾いていた」あの頃の私が、一番喜んでいる気がします。
日常の延長線上で、鳥のさえずりや風に揺れる木々の木漏れ日を感じながら弾くピアノ。
音色と自然が溶け合うそのひととき、実は弾いている私がいちばん幸せを感じています。
紫香邸の魅力とともに、私のささやかな想いも伝われば嬉しいです。

ピアノの時間
秋の甘味とピアノの響きをお楽しみください。(参加費無料)
① 10/18(土)19(日)20(月)15:00〜
② 10/25(土)26(日)27(月)



