第2回 畑の前の前の畑作り /メヒコの部屋 初夏の畑編

| 井川 | ボクも育ちはずっと東京で、田坂も結城もそうです。 | ||||
| だからなんていうか、厳しい現実? | |||||
| を知らないって言うのはあります。 | |||||
| 北海道でなんか楽しそうっていう。 | |||||
| あなたは離農したり夜逃げしたりした人たちのこと知らないから、 | |||||
| そんなのんきなことやってられるんだと、 | |||||
| こっちの人に軽く嫌みを言われました。 | |||||
| メヒコ | ほんとだわ。 | ||||
| 井川 | でもね、まぁとにかく一通りやってみてね、 | ||||
| それからどうしようって言うことを | |||||
| 考える人たちが集まってるから。 | |||||

| メヒコ | でやってみてどうだったの。 | ||||
| 井川 | まだやってると言ってもひと月ちょっとですから、 | ||||
| 何とも言いようがないんだけどもね。 | |||||
| ここは十勝でも南の、もうすぐそこが海っていう、 | |||||
| 大樹町というところなんですけど。 | |||||
| そこにインカルシペというところがあって、 | |||||
| 白樺の原生林が残されているのね。 | |||||
| そこに米山さんという方がいらして、白樺の樹液を採ってらして。 | |||||
| マメヒコでその樹液を使って | |||||
| コーヒーを淹れてたことがまぁ縁でして。 | |||||
| それが5年前。 | |||||
| メヒコ | あたしも飲んだことあります。樹液。 | ||||
| 無色透明で、ほんのり少し甘いのよね。 | |||||
| そういう白樺に囲まれた場所でこうしてね。 | |||||
| 井川 | 農業っていうのはやりたいと思っても、 | ||||
| ぱっと始められないんですね。 | |||||
| 農地法というのがあって、おまえ農業やる気あんのかよ。 | |||||
| そうじゃないとやらせないよっていう、閉鎖的な法律がある。 | |||||
| だから簡単にお金で土地を買ったりできないの。 | |||||
| それでこの土地を、 | |||||
| ここは原野に近い | |||||
| 草ボウボウになってたとこだったんですけど、 | |||||
| そこを借りて春になって耕して、今みたいな畑にしたんです。 | |||||
| メヒコ | ここは草ボウボウだったわけ? | ||||
| 井川 | そうです。 | ||||
| さすがにこの土地を起こすのは人の手では無理なんで、 | |||||
| 大型のロータリーで土を何度も起こしてもらって。 | |||||
| それでこの状態にして。 | |||||
| メヒコ | あら手じゃ無理なの? | ||||
| 井川 | 無理です。 | ||||
| 昔の農家は一家に馬を必ず飼っていて、 | |||||
| その馬に土起こしをやらせたみたいだけど。 | |||||
| いまは機械を使わないと、恐らく難しい。 | |||||
| メヒコ | なら馬もついでに飼えばいいじゃないの。 | ||||
| 井川 | まぁそれはそうですけど。 | ||||
| メヒコ | お馬さん飼うなんてすてきじゃない。 | ||||
| 井川 | ボクと結城と田坂と3人で春先に立ちどまって、 | ||||
| さぁどうしようかってね。 | |||||
| いざとなると、途方に暮れまして。 | |||||
| メヒコ | 経験もないのにね。2人が不憫でならないわ。 | ||||
| 井川 | 今年の春は天候が最悪だったの。 | ||||
| お茶ヒコのお茶摘みに例年より2週間ほど遅れたしね。 | |||||
| 茨城にね、行くんです毎年。 | |||||
| それが今年は遅れて、その足で北海道に行ったんだけど、 | |||||
| とにかく5月ごろまで | |||||
| まだ畑の周りに雪が残ってるという状態で。 | |||||
| メヒコ | 5月に雪が残ってるなんて。 | ||||
| 井川 | そうなんです。普通ね。 | ||||
| カッコウの鳴き出す頃には豆まきだぞというのに。 | |||||
| ほんとに遅かった。 | |||||
| 昨年は100年に一度の不作と言われたんだけど、 | |||||
| 今年はさらに悪いと。 | |||||
| メヒコ | それで。 | ||||
| 井川 | もうハナから諦めモードで。まぁこれじゃ無理だなと。 | ||||
| でもね。 | |||||
| とりあえずこっちに来ちゃってるしね。 | |||||
| メヒコ | 帰るわけにはいかないしね。 | ||||
| 井川 | それで作物を絞ろうと。大豆一本に絞ろうと決めて。 | ||||
| とにかく大豆畑を1.5ha作ることにしたわけです。 | |||||
| でね。 | |||||
| とにかく採寸をしなきゃというところから始めたわけです。 | |||||
| 長いメジャーをホームセンターで買ってきて。 | |||||
| 50mの。それで測って。 | |||||
| まずこの土地がいったい | |||||
| 如何ほどのものかというところから知らなきゃねと。 | |||||
| それで土地の面積を測ってったんです。 | |||||
| メヒコ | 測るのも難しいんじゃない。 | ||||

| 井川 | そうなんです。 | ||||
| 大きいものを測るというのは意外と難しい。 | |||||
| 少しの誤差でずいぶんと違って来ちゃう。 | |||||
| まっすぐ引っ張ってるつもりでも、それがまっすぐじゃなくてね。 | |||||
| 直角に線を引くのも見た目では広すぎてわからない。 | |||||
| それで最初の何日はまず長さを正確に測れない。 | |||||
| メヒコ | そうね。ちょっとずれただけでもすごい誤差でしょ。 | ||||
| 井川 | この土地は真四角の1.5haだと思って借りて、 | ||||
| 測ってみるんだけど。どうも合わない。 | |||||
| それでね、google mapでね、 | |||||
| この土地の衛星写真で見てみたの。 | |||||
| メヒコ | ハイテク! | ||||
| 井川 | そしたら驚愕の事実が発覚したの。 | ||||
| この土地は四角じゃなくて三角形だったの。 | |||||
| メヒコ | あーた四角と三角じゃ相当違うじゃないの。 | ||||
| 井川 | そうなの。けどわかんないんですよ。 | ||||
| そこに立ってみたら四角だかどうかすらも。 | |||||
| それでさらに、驚愕の事実が。 | |||||
| メヒコ | なになに宇宙人が写ってたとか。 | ||||
| 井川 | いままで南だと思っていたのが東だったんです。 | ||||
| メヒコ | あーた。何もわかってないんじゃないの。 | ||||
| 井川 | そう。なんにもわかんなかったの。衛星写真見るまでは。 | ||||
| 見た目にはわかんないんですよ。 | |||||
| どどんと四角いと思ってた土地が実は三角だったとか。 | |||||
| でもそれで、大体のあたりをつけて、 | |||||
| 寸法を測ったら。また驚愕の事実が。 | |||||
| メヒコ | なによ。 | ||||
| 井川 | 1.0haしかなかった。 | ||||

| メヒコ | よかったわね。始まる前に気付いて。 | ||||
| 気づかなかったらいろいろとおかしなことになってたわね。 | |||||
| 井川 | そうです。それで正確な土地の面積を割り出して。 | ||||
| 作付け計画って言うのかな。 | |||||
| どこに何作ろうって考えたんですね。 | |||||
| メヒコ | それがこれなのね。 | ||||
| あらほんと三角の土地に、大豆、小豆、ひまわり、野菜...。 | |||||
| またずいぶんと細かく分かれてるのね。 | |||||
| 井川 | 全部手作業でやるわけでしょ。 | ||||
| 機械なら1ヘクタールなんてわけないです。 | |||||
| けど手でやるとなったらやっぱり大変だなって思ったのね。 | |||||
| メヒコ | そうね。それで細かく分けたのね。 | ||||
| 井川 | 土の中を歩くって大変なんですよ。 | ||||
| とくに湿気を含んだ土は重くてね。 | |||||
| 長靴にくっついて。土の中を歩くだけで疲れちゃう。 | |||||
| だから、まずはあぜ道というか畑の真ん中に道を造ろうと。 | |||||
| それでここからこうやって | |||||
| まっすぐに道を造る計画にしたわけです。 | |||||
| それで50m行ったら横に走る道を造って。 | |||||
| また50m走ったら横に道を造って。 | |||||

| メヒコ | 確かに縦横に道が走ってる。 | ||||
| この道をアベニューとかストリートって呼んでるんですってね。 | |||||
| それはそのニューヨークにちなんで? | |||||
| 井川 | そうです。縦に走るのをアベニュー。 | ||||
| 横に走るのはストリート。 | |||||
| 50丁目、100丁目、150丁目とあって、アベニューを挟んで | |||||
| ウエストサイド、イーストサイドって。 | |||||
| 8区画にわけて管理することにしました。 | |||||
| メヒコ | そうすれば管理しやすいわね。 | ||||
| 井川 | 畑の右側は森なので日当たりが悪いんですね。 | ||||
| 午後になると日陰になってくる。 | |||||
| だからなるべく左をメインにして。 | |||||
| 区画を小さくするのは大規模農業としては効率悪いですけど、 | |||||
| 人間がやるには小さな目標があった方がいいですから。 | |||||
| 今日は50thストリートまで除草しようとかね。 | |||||
| 目先の目標がないと、なんだか悲しくなる。 | |||||
| 先が見えないと女の子は悲しくなるでしょ。 | |||||
| メヒコ | そうかもね。 | ||||
| 井川 | だから、まず真っ先にしたのは、 | ||||
| 測量とその道路を造ることでした。 | |||||
| 道はふかふかの土を固める機械を借りてきて。 | |||||
| それに畑に行くまでの道は、 | |||||
| ふきとクマ笹で車も入れない状態でしたから。 | |||||
| それを刈り払い機で刈って。 | |||||
| ハタケの入り口にはパワーショベルを使って芝生を敷いて。 | |||||
| メヒコ | 畑の前の前の畑作りという感じ。 | ||||
| 井川 | そう、いまはさらに前の前の前の畑作りだったなと。 | ||||
| それからがまた大変で。 | |||||

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