kageyama6-1.jpg影山知明-1973年、西国分寺生まれ。愛知県育ち。
東京大学、法学部卒業後、外資系コンサルティング会社に勤務。
その後、志を持ってベンチャーキャピタリストに転身。
昨年秋、生家の地にマージュ西国分寺を建てる。
そこに子供たちのためのカフェ「クルミドコーヒー」を開き、
試行錯誤の毎日を送っている。娘のゆのちゃんは今年2歳。
クルミドコーヒー 
http://kurumed.jp/

子供時代。
子供だったあなたのために作ってくれたおやつのことを、
あなたはどれだけ時間が経っても忘れないだろう。
それがたとえ不格好であったとしても、
それがたとえ不揃いであったとしても、
それがたとえ恥ずかしい思いをするようなものであったとしても、
いやむしろそうであるほど、大人になったあなたの胸に、
おやつはどこか痛いのではないか。

 「笑っちゃうほどダサかった」

いつしか。
子供のおやつは豊富になり、選べるようになり、
手軽になり、かっこよくなって。その分。
おやつにときめかなくなった今の子供は、むしろ哀しい。
クルミドコーヒーで出すどんなおやつも、
親の作ったおやつには勝らないだろう。
けれど。
なにか子供に記憶に残るおやつを作れるとしたら。

kakeyama49.jpg全部コツコツと手で作ること。

クルミドコーヒーとマメヒコが考える子供のおやつ。
そんな試作がマメヒコで続いている。
うるち米と白米を炊き、ついた餅を小さく2つ丸める。
ひとつは細かく刻んだクルミでくるんでみる。
クルミはひとつひとつ殻を割るところから影山がやる。
中にはマメヒコで炊いた小豆の餡が入っている力作だ。
もうひとつ。
餅にクルミだれをかける。
前山寺で食べたクルミだれが思いのほか美味しく、
これを是非やりたいと影山は思っていた。

kageyama46.jpgやってみた。これが失敗。
色合いが同じモノが2つ並ぶ餅に、見栄えとして食欲をそそられない。
そこで2つの餅をひとつにしてみることに。
刻んだクルミでくるみ、さらにその上から、クルミだれをかける。
さらの上に1つの餅が寂しそうにたたずんでいる。

kageyama42.jpg影山「アクセントをつける意味で黒ごまでくるんだ餅にクルミだれをかけたらどうかな」

早速。黒いすりごまを用意し、くるんでみる。
見た目には美しい。黒い餅に白いクルミのコントラスト。
食べてみる。

「美味しいけど、これはただの黒ごまのおはぎだね」

kageyama41.jpgひとつではどうも収まりが悪い。やはり2色の餅を並べるべきである。
甘いあんこを食べ過ぎて、食傷気味になるが、さらに提案。

「クランチしたクルミでくるんだもの。
小豆のあんこでくるんだもの。
この2つを作ってならべてみる。
これは白黒コントラストで美しい。
クルミの方には、クルミだれをトロンとかけよう。
あんこの方には、中にクルミの佃煮をくるむっていうのはどうでしょう」
 

試作中。影山は少し辛そうだ。咳が止まらない。
今年になって風邪をひくことが多くなった。
そういえば何年か前にも似たような経験がある。
一流コンサルタント会社を辞めたころのことだ。

kakeyama50.jpg影山は今とても充実している。
新しい扉がどんどん開いている。
エプロンをして、餅をこねている自分が好きだ。
ベンチャーキャピタリストの仕事も概ね順調だし、
影山ファンドを作るという夢だって現実になろうとしている。
クルミドコーヒーだって確実に手応えを感じ始めている。
環境の変化に体は正直なのか。乾いた咳がここのところ止まらない。

「これ、クルミ餅って名前にしよう。
胡桃が豆をクルミ、豆が胡桃をクルム、クルミ餅」

kageyama43.jpg小豆餡でくるんだ餅の中にはクルミの佃煮を。
刻んだクルミでくるんだ餅の中には、前川金時と紅絞りの甘煮を入れ、
彩りに笹の葉っぱを敷くことにした。
盛りつけのアドバイスをもらい、
これでクルミドコーヒーとマメヒコの「互いをクルミ餅」の完成だ。

kageyama44.jpgマージュ西国分寺の4階。
ここに住む子供たちにクルミ餅を食べてもらうことにした。
影山の自慢のおやつ。
子供たちが喜んで食べる姿を見ればきっと今までの苦労も報われる。
小さい頃、母が作ってくれたマドレーヌが好きだった。
今日はボクのお餅を召し上がれ。
小さかった君が小さな君へ、クルミ餅を作った。

kakeyama47.jpg「きゃー、なんか、かわいい」

小さい君たちも、あっという間に小さかった君になり、小さい君におやつを作る日が来るだろう。
いくつもの小さな口がクルミ餅にかじりついている。

「なにこれ苦っ。クルミって苦い。なんかあんこの方がおいしい」
「なんかさ。クルミって、もそもそするね」

クルミの評判はすこぶる悪い。
小さかった君は小さな君に苦笑い。

kageyama45.jpg

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mamehicoヒトヒコヒトヒコ12週:影山知明さん影山知明-1973年、西国分寺生まれ。愛知県育ち。東京大学、法学部卒業後、外資系コンサルティング会社に勤務。その後、志を持ってベンチャーキャピタリストに転身。昨年秋、生家の地にマージュ西国分寺を建てる。そこに子供たちのためのカフェ「クルミドコーヒー」を開き、試行錯誤の毎日を送っている。娘のゆのちゃんは今年2歳。クルミドコーヒー http://kurumed.jp/ 子供時代。子供だったあなたのために作ってくれたおやつのことを、あなたはどれだけ時間が経っても忘れないだろう。それがたとえ不格好であったとしても、それがたとえ不揃いであったとしても、それがたとえ恥ずかしい思いをするようなものであったとしても、いやむしろそうであるほど、大人になったあなたの胸に、おやつはどこか痛いのではないか。  「笑っちゃうほどダサかった」 いつしか。子供のおやつは豊富になり、選べるようになり、手軽になり、かっこよくなって。その分。おやつにときめかなくなった今の子供は、むしろ哀しい。クルミドコーヒーで出すどんなおやつも、親の作ったおやつには勝らないだろう。けれど。なにか子供に記憶に残るおやつを作れるとしたら。 全部コツコツと手で作ること。 クルミドコーヒーとマメヒコが考える子供のおやつ。そんな試作がマメヒコで続いている。うるち米と白米を炊き、ついた餅を小さく2つ丸める。ひとつは細かく刻んだクルミでくるんでみる。クルミはひとつひとつ殻を割るところから影山がやる。中にはマメヒコで炊いた小豆の餡が入っている力作だ。もうひとつ。餅にクルミだれをかける。前山寺で食べたクルミだれが思いのほか美味しく、これを是非やりたいと影山は思っていた。 やってみた。これが失敗。色合いが同じモノが2つ並ぶ餅に、見栄えとして食欲をそそられない。そこで2つの餅をひとつにしてみることに。刻んだクルミでくるみ、さらにその上から、クルミだれをかける。さらの上に1つの餅が寂しそうにたたずんでいる。 影山「アクセントをつける意味で黒ごまでくるんだ餅にクルミだれをかけたらどうかな」 早速。黒いすりごまを用意し、くるんでみる。見た目には美しい。黒い餅に白いクルミのコントラスト。食べてみる。 「美味しいけど、これはただの黒ごまのおはぎだね」 ひとつではどうも収まりが悪い。やはり2色の餅を並べるべきである。甘いあんこを食べ過ぎて、食傷気味になるが、さらに提案。 「クランチしたクルミでくるんだもの。小豆のあんこでくるんだもの。この2つを作ってならべてみる。これは白黒コントラストで美しい。クルミの方には、クルミだれをトロンとかけよう。あんこの方には、中にクルミの佃煮をくるむっていうのはどうでしょう」   試作中。影山は少し辛そうだ。咳が止まらない。今年になって風邪をひくことが多くなった。そういえば何年か前にも似たような経験がある。一流コンサルタント会社を辞めたころのことだ。 影山は今とても充実している。新しい扉がどんどん開いている。エプロンをして、餅をこねている自分が好きだ。ベンチャーキャピタリストの仕事も概ね順調だし、影山ファンドを作るという夢だって現実になろうとしている。クルミドコーヒーだって確実に手応えを感じ始めている。環境の変化に体は正直なのか。乾いた咳がここのところ止まらない。 「これ、クルミ餅って名前にしよう。胡桃が豆をクルミ、豆が胡桃をクルム、クルミ餅」 小豆餡でくるんだ餅の中にはクルミの佃煮を。刻んだクルミでくるんだ餅の中には、前川金時と紅絞りの甘煮を入れ、彩りに笹の葉っぱを敷くことにした。盛りつけのアドバイスをもらい、これでクルミドコーヒーとマメヒコの「互いをクルミ餅」の完成だ。 マージュ西国分寺の4階。ここに住む子供たちにクルミ餅を食べてもらうことにした。影山の自慢のおやつ。子供たちが喜んで食べる姿を見ればきっと今までの苦労も報われる。小さい頃、母が作ってくれたマドレーヌが好きだった。今日はボクのお餅を召し上がれ。小さかった君が小さな君へ、クルミ餅を作った。 「きゃー、なんか、かわいい」 小さい君たちも、あっという間に小さかった君になり、小さい君におやつを作る日が来るだろう。いくつもの小さな口がクルミ餅にかじりついている。 「なにこれ苦っ。クルミって苦い。なんかあんこの方がおいしい」「なんかさ。クルミって、もそもそするね」 クルミの評判はすこぶる悪い。小さかった君は小さな君に苦笑い。