2009/07/10

烏龍茶・茶師 山道帰一 第五話


yamamichi22.jpg山道帰一-1975年生まれ。
東京・広尾にある台湾烏龍茶専門店「清品茶房 茶通」店主。
マメヒコの中国茶は、すべて山道氏がセレクトしている。
台湾・韓国・中国などアジア各地をはじめ、
世界各国で宗教や哲学、風水を学び風水師としての著書も多数。
台湾で出会ったお茶に惹かれ、台湾政府の認定の茶師の資格を持つ。
茶葉の買い付けは全て自ら台湾各地の茶園に出向き調達している。

台北からポンさんのタクシーで2時間あまり。
台湾の苗栗県にある新竹についた。
台湾唯一の東方美人の産地だ。

それにしても暑い。
日差しはそれほどでもないが、むせかえるような湿気だ。
町を歩けばハイビスカスが咲き、青いクワバがたわわに実っている。
汗がじっとりと体にまとわりつく。
深く息をすると東方美人特有の甘い蜜の匂いがする。
ある茶農家をたずねた。

yamamichi24.jpg茶畑は日本の茶畑とはずいぶん違った印象だ。
ジャングルのような雑木林の中にあり、茶樹の下からは雑草が生い茂っている。

山道「いました。これが。ウンカ。ウンカ」

yamamichi23.jpg東方美人を作るのはウンカというヨコバエに似た虫だ。
ウンカのために除草剤や農薬は使えないという。
マメヒコ茶に比べると新芽も極めて小さい。
その小さな茶葉をよく見ると、ところどころねじれている。
これがウンカの仕業だ。
このウンカによってねじれた茶葉を探すのはたやすいことではない。

さらに製茶場に行ってみた。
摘み取ったばかりの茶葉がザルの上で萎凋されている。
日差しは強くないが高温多湿の気候がこのあたりの茶葉の香りを高くし、発酵(酸化)も促している。
そのザルに広げられた茶葉を見て驚いた。

yamamichi25.jpg
yamamichi26.jpgスズメの舌ほどの大きさなのだ。
マメヒコ茶とは比べものにならないほどの繊細さだ。
こんなものを10kg集めるというだけで気が遠くなる。
傍らには大ぶりの茶葉が萎凋されている。
茶葉を選定する上で出るカスだという。土に戻して肥料にするという。
丹念に育て、摘み取った茶葉を手間を惜しまず加工し、品評会に出して、高い評価を受ける。
そうすれば茶葉は高く値がつき、世界中から買いに来る。
それがこのあたりの茶農家の生きる道だ。

早速今年の東方美人を20種ほど試飲していく。
値段は一斤(約600g)100台湾元(300円)というものから、一万元(30,000円)まで。
品質のよい東方美人は世界でも引く手あまたで、その値は天井知らずだという。
どんだけ高くとも質がよければ買うひとがいる。だから値段がつく。

茶師・山道が試飲していく。
カップにきちんと3g量って茶葉を入れ、待つこと4分。
これは品評会のやり方だ。
これをつぎつぎと試していく。
山道は相変わらず、ずっとしゃべっている。
しゃべりながらノートにメモを取る。
真剣勝負には、・・・見えない。
ただ旧知の友達としゃべっているようにしか見えない。
しかし、時折、じゃぁこれはと出されるお茶がある。
値段も中味も知らされずに、なにげに出されるお茶。

yamamichi27.jpg山道「こういうのが意外と罠なんですよ。
うっかり間違ったこと言うと、足下見られて、本当のものを売ってくれない。
やっぱりお茶はテイスティングがすべてです。
お茶を飲んで見極められなければね、向こうだって商売ですからいかさまを売ってくるんですよ。
危ない。危ない」

yamamichi28.jpg台湾のなかでも梅山、凍頂、文山、梨山、東方美人。
山道はこの仕事を始めるときに、各地域の品評会で常に上位にいる茶農家のリストを手始めに作ったという。
そして農家を一軒ずつ訪ねた。

山道「お茶はどこいっても、飲ませてくれるんですよ。
ただ、そこで出されるお茶がどんなものか相手の茶師にきちんと伝えられなければ売ってくれません。売ってくれたとしても質の悪いお茶を高く売りつけられるだけ。
道場破りじゃないですけど、向こうの問いに答えていけば、向こうもこいつには本物出さないとマズイとなる。
じゃぁこういうのもあるよと裏からほんとにいいものを出してくれる」

yamamichi29.jpg山道はテイスティングをとても大事にしている。
そうやって培った信頼が山道を茶師として支えている。
同じ地域でもいい畑、悪い畑があるという。
風の流れ、水の流れ、霧の流れ、さらに気の流れ。
茶葉を取り巻く環境はそのままお茶の味を決めていく。
風水師の観点でとらえる良い茶畑と、優れた茶師の観点で考える良い茶畑はほぼ同じだ。

山道「すごい茶師というのがいるんですよ。
ボクが修行時代、自分で作ったお茶をある茶師に飲んでもらったことがあるんですね。
そうしたら、うんとしばらく考え込んで、『これは途中で雨が降ってきたな、それをきみは慌ててしまったな』とぴたりと当ててしまうんです」

お茶に精通するほど、自然と一体となった不思議な力を身につけなければ、お茶に太刀打ちできない。
山道はますますそう感じている。

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