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菊地良三(よしみ)-珈琲焙煎師。札幌 菊地珈琲代表。67歳。
1941年(昭和16年)北海道・音更出身。
ジャガイモや豆を作る畑作農家に生まれる。8人兄弟。
札幌の大学を卒業後、大手珈琲商社に就職し、45歳で独立。自家焙煎珈琲
の店「菊地珈琲 キクチ珈琲」を開業した。
http://www.kikuchicoffee.co.jp
長年の経験による独自の珈琲は、主に札幌市内の喫茶店に届けられている。
2005年以降、都内では唯一、カフエ マメヒコに珈琲豆を卸している。

原油高騰をはじめとした世界の動きが食材の値段を上げている。
輸入に頼っている珈琲豆もまた同じである。
菊地良三は困っていた。仕入れの値段が上がり続けている。商社時代から幾度と経験してきたことだが、かつてないほどの高騰ぶりだ。今後も下がることはなさそうなのである。

小さな商売では材料の高騰はそのまま利益減だ。
しかし菊地は小さいことは利点だと思っている。
豆のような小さな力士が大きな力士をまかすのが好きだ。
大きくて小回りがきかず土俵に倒れる力士を、商社時代、いくつも見てきたのだ。

菊地「海外の産地から神戸の港までの輸送費、神戸から札幌までの輸送費のコスト高で、正直、利益はなくなりそうです。
かといって、値上げすればいいっていうのは違う。経費が上がったからとお客さんに負担させちゃだめなんだ。
まず自分のまわりを見る。工夫し見直すべきところなんていくらだってあるんだよ」

vol2-2-2.jpg菊地は徹底して無駄を嫌う。
喫茶店で出すメニューも無駄がないように工夫されている。
喫茶部門の食事はホットサンドとトーストしかない。このホットサンド。話しを聞くと実に菊地そのものなのである。

菊地「菊地珈琲の喫茶部門はね、持ち込み可なんだよ。そう。
だって、もともと焙煎したての珈琲を試飲してもらおうと思って始めただけなんだから。弁当でも何でも買ってきて、食べてもらってかまわないのよ。
でもね。さすがに、喫茶店で弁当広げるひとなんていない。おい菊地、珈琲に合わせて何か食べるもの出せよってことになって」

それで始めたのがホットサンドである。
味は毎日食べても飽きないようにツナ、チーズ、エッグ、和風と4種類用意している。
和風とは野沢菜に山葵をきかせた変わり種だ。
パンも中の具材も質にはこだわっている。
そして、ここからが菊地らしい工夫。

vol2-2-3.jpg菊地「菊地珈琲でランチを食べたが、しばらくしたら腹減って、立ち食い蕎麦を食べたっていうんじゃお客さんに申し訳立たない。かえってお金がかかっちゃうもの。
これなら手間がかからないし、食べ切れなければ持って帰ればいい」

と、ホットサンドのすべてにバナナと茹で玉子をつけたのである。
サラダではない。

菊地「玉子は大きくて見栄えの良い赤玉しか使わない」

菊地珈琲ではブルーマウンテンNO.1を扱っている。
どの店でもブルマンNO.1は人気でその希少価値もありとても高い。菊地はこのブルーマウンテンNO.1に誇りを持っている。2号店の名を菊地珈琲ブルーマウンテン館としたほどだ。
倉庫には正真正銘のブルーマウンテンNO.1が樽に詰められ置いてあり、喫茶部門では低価格で提供しているという。

vol2-2-4.jpg菊地「これだけの本物をこれだけの量、確保するだけでも難しい」

菊地の人間関係、菊地の工夫、菊地の知識、菊地の度胸、それにともなう菊地の運が無ければ、菊地珈琲などとうの昔にない。
そして、かつてないほどの珈琲豆の高騰。
菊地は値上げをせずにこの高騰をどう乗り切るつもりなのか。

菊地「いままで休ませてもらっていた祝日をね、4月からやることにしました」

利益を確保したいならば自分の休みを減らせばいいと菊地はあっさり言い切ってしまう。

モットホシケレバ、モットハタラク。
NO PAIN.NO GAIN.

菊地の根底にある哲学だ。
妻まり子が言う。

まり子「気持ちというのは飾ってはいけないと思います。飾ってしまったらそれは、誠意ではなくなります」

あらかじめ自分の取り分を確保しながら、様々な問題を論じる今の日本を、菊地にはどう写るのだろう。

mamehicoヒトヒコヒトヒコ2週:菊地良三さん菊地良三(よしみ)-珈琲焙煎師。札幌 菊地珈琲代表。67歳。1941年(昭和16年)北海道・音更出身。ジャガイモや豆を作る畑作農家に生まれる。8人兄弟。札幌の大学を卒業後、大手珈琲商社に就職し、45歳で独立。自家焙煎珈琲の店「菊地珈琲 キクチ珈琲」を開業した。http://www.kikuchicoffee.co.jp長年の経験による独自の珈琲は、主に札幌市内の喫茶店に届けられている。2005年以降、都内では唯一、カフエ マメヒコに珈琲豆を卸している。 原油高騰をはじめとした世界の動きが食材の値段を上げている。輸入に頼っている珈琲豆もまた同じである。菊地良三は困っていた。仕入れの値段が上がり続けている。商社時代から幾度と経験してきたことだが、かつてないほどの高騰ぶりだ。今後も下がることはなさそうなのである。 小さな商売では材料の高騰はそのまま利益減だ。しかし菊地は小さいことは利点だと思っている。豆のような小さな力士が大きな力士をまかすのが好きだ。大きくて小回りがきかず土俵に倒れる力士を、商社時代、いくつも見てきたのだ。 菊地「海外の産地から神戸の港までの輸送費、神戸から札幌までの輸送費のコスト高で、正直、利益はなくなりそうです。かといって、値上げすればいいっていうのは違う。経費が上がったからとお客さんに負担させちゃだめなんだ。まず自分のまわりを見る。工夫し見直すべきところなんていくらだってあるんだよ」 菊地は徹底して無駄を嫌う。喫茶店で出すメニューも無駄がないように工夫されている。喫茶部門の食事はホットサンドとトーストしかない。このホットサンド。話しを聞くと実に菊地そのものなのである。 菊地「菊地珈琲の喫茶部門はね、持ち込み可なんだよ。そう。だって、もともと焙煎したての珈琲を試飲してもらおうと思って始めただけなんだから。弁当でも何でも買ってきて、食べてもらってかまわないのよ。でもね。さすがに、喫茶店で弁当広げるひとなんていない。おい菊地、珈琲に合わせて何か食べるもの出せよってことになって」 それで始めたのがホットサンドである。味は毎日食べても飽きないようにツナ、チーズ、エッグ、和風と4種類用意している。和風とは野沢菜に山葵をきかせた変わり種だ。パンも中の具材も質にはこだわっている。そして、ここからが菊地らしい工夫。 菊地「菊地珈琲でランチを食べたが、しばらくしたら腹減って、立ち食い蕎麦を食べたっていうんじゃお客さんに申し訳立たない。かえってお金がかかっちゃうもの。これなら手間がかからないし、食べ切れなければ持って帰ればいい」 と、ホットサンドのすべてにバナナと茹で玉子をつけたのである。サラダではない。 菊地「玉子は大きくて見栄えの良い赤玉しか使わない」 菊地珈琲ではブルーマウンテンNO.1を扱っている。どの店でもブルマンNO.1は人気でその希少価値もありとても高い。菊地はこのブルーマウンテンNO.1に誇りを持っている。2号店の名を菊地珈琲ブルーマウンテン館としたほどだ。倉庫には正真正銘のブルーマウンテンNO.1が樽に詰められ置いてあり、喫茶部門では低価格で提供しているという。 菊地「これだけの本物をこれだけの量、確保するだけでも難しい」 菊地の人間関係、菊地の工夫、菊地の知識、菊地の度胸、それにともなう菊地の運が無ければ、菊地珈琲などとうの昔にない。そして、かつてないほどの珈琲豆の高騰。菊地は値上げをせずにこの高騰をどう乗り切るつもりなのか。 菊地「いままで休ませてもらっていた祝日をね、4月からやることにしました」 利益を確保したいならば自分の休みを減らせばいいと菊地はあっさり言い切ってしまう。 モットホシケレバ、モットハタラク。NO PAIN.NO GAIN. 菊地の根底にある哲学だ。妻まり子が言う。 まり子「気持ちというのは飾ってはいけないと思います。飾ってしまったらそれは、誠意ではなくなります」 あらかじめ自分の取り分を確保しながら、様々な問題を論じる今の日本を、菊地にはどう写るのだろう。