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2008/06/06

珈琲焙煎師 菊地良三 第五話


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菊地良三(よしみ)-珈琲焙煎師。札幌 菊地珈琲代表。67歳。
1941年(昭和16年)北海道・音更出身。
ジャガイモや豆を作る畑作農家に生まれる。8人兄弟。
札幌の大学を卒業後、大手珈琲商社に就職し、45歳で独立。自家焙煎珈琲
の店「菊地珈琲 キクチ珈琲」を開業した。
http://www.kikuchicoffee.co.jp
長年の経験による独自の珈琲は、主に札幌市内の喫茶店に届けられている。
2005年以降、都内では唯一、カフエ マメヒコに珈琲豆を卸している。

息子、博樹が焙煎を担うようになってからというもの、菊地良三(67)の仕事はもっぱら配達である。

菊地珈琲が得意先としている喫茶店や専門店は札幌市内だけで100軒前後。これを一週間で回りきるようローテーションを組んでいる。焙煎して一週間で飲みきってもらえる分だけ配達しようという菊地の配慮だ。
配達する豆は10グラム単位で細かく仕分けされている。
ときには一握りの量でも配達するという。要望があれば少なかろうが快く袋に詰めて届ける。これもおいしく飲んでもらうための菊地珈琲のやり方なのだ。

一日の配達での移動距離は60~70km。300km離れた函館への配達は泊りがけだ。

菊地「朝から出かけて、着いたらお得意先を回って、夜はゆっくり温泉に浸かって、次の日の朝札幌に帰る。嬉しいよね。函館からわざわざうちに注文してくださるんだから」
22年間、函館への配達をただの一度も欠かしたことがない。

配達先では珈琲を飲むこともある。
その時は味を確かめるというよりは楽しく飲む。
お得意さんでもある店のマスターと談笑をする。
そのときもお代は自分の財布からきちんと支払う。
「菊地さん、お代はいいから」とマスターが恐縮しても、それはそれこれはこれとさっさと支払ってしまう。
つまりは菊地良三とはそういうひとなのである。
「豆」なのだ。

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菊地良三は焙煎師として極めて高い技術を持っている。

会社時代。研究熱心、まじめ、一本筋な性格の菊地は、来る日も来る日も納得のいく豆を焼き続け、ほかにはまねのできない高い焙煎技術を身に付けた。いまでも日本各地の焙煎師たちがその技術を教えてほしいと訪ねてくるほどだ。
しかし焙煎師として超一流の腕を持ちながら、焙煎をあっさり息子に引き渡してしまっている。

いまは焙煎師というより配達員だ。

夜、7時。本店が閉まる。
菊地は朝5時に起き、6時から働いている。なのに疲れた顔も見せずに片づけをしている。

vol1-5-3.jpg「もしもし菊地珈琲です」
一本の電話がかかってきた。得意先の喫茶店からだ。
コロンビア豆が急に欠品してしまったらしい。申し訳ないがあしたの配達で届けてもらえませんか。
「えぇ、もちろんです」
と電話を切った菊地は、社長業は雑用業と笑いながら上着を着ている。自宅に帰るのかなと思ったら、電話のあった喫茶店に向かうという。

菊地「今日の配達は終わったから、明日、届けます、と答えるのは簡単なのさ。けど、その珈琲を飲みたがっているお客さんが今いるかもしれないわけさ。だからできる限り今持ってっちゃう。そうすれば一人でも多くのお客さんに喜んでもらえるわけでしょ」

どこまでこの人は「豆」なのだろう。
明日の朝はまた5時に起きるのだ。
ライラックの匂いを運ぶ夜風のなかを、菊地良三は配達へと出かけていく。

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