2010/08/12

第14回 なんてインチキなんだと/メヒコの部屋 初夏の畑編

井川 けど、佐藤さんはこれを右が前になるように設計してる。
メヒコ あっわかった。
北風が隙間から入らない様にね。
井川 そう。左が前だと北風が右方向から入ってくるんですね。
それを防ぐために、あえて、右の窓を前にして、
北風が吹いても建物の中に入らない様にしてある。
メヒコ おっそれはすごい。
井川 それはこの縦に貼ってある板に関してもそうで、
北風が入らない様にほぞが彫ってあって、そうやって貼ってるんです。
メヒコ なるほど。
井川 ほかにも、屋根を支えてるあの棒を垂木(たるき)と言うんですけど、
その垂木が太い。
メヒコ それも雪の重さに耐えるため。
井川 そうです。
メヒコ 知恵ですね。
井川 それでその垂木が外から見えるところは
ちゃんと面を取ってある。
メヒコ ほんとだ。
井川 こだわる人はここに家紋や好きな文様を彫ったりするそうです。
メヒコ へぇー。
井川 そういうのって、できないです。うらやましい。

マメヒコ作ってて大工さんにここにロゴ彫っといてくださいなんて
絶対にできないです。

彫ってくださいって言ったら、一ついくらですって見積もり来て、
こんなにするんだ。
高いからやっぱ辞めようかってなっちゃうんです。
メヒコ だからシンプルになってしまうのね。今はシンプルを良しとせざるを得ない。
昔の大工さんは勝手にやったんでしょうね。よかれと思って。
こっそりやっといたからって。
井川 あっどうもってね。
井川 そう。こういう細かいことをいちいち発注なんてできないと思うんですね。
ボクが無知なだけかもしれないから、よくわかんないですけど、
一事が万事大工さんにこんなことされたら、
大事に使おうって思うと思うんですよね。
メヒコ それは服でも家具でもみんなそうね。
井川 そう。粗末に作られたものに囲まれて暮らすというのは、
なんか、自分が粗末に扱われてると想ってしまうんですね。
表向きはおしゃれだけど、裏はぺこぺこだよ。
けど、おまえにはわかんないからそれでいいでしょ。
メヒコ 素人にはわからない。
だから、きちんと仕事するって言うのとは逆になってる。
素人にはわかんないから雑にやる。ってなってる。
井川 昔は違ったのかそれはわからないですけど。
たとえば、この縦に貼ってる板の木目を見てください。
これ全部おなじ山形になってるでしょ。
これも聞いたんです。そしたら、全部そろえてるって言うんですね。
なぜならみっともないから。
メヒコ みっともないからね。
井川 柱は全部、木だったときと同じ向きに立ててるって知ってます?
メヒコ どういうこと?
井川 木から柱をとるでしょ。
メヒコ はい。
井川 そのとき木の生えてた向きと、同じ向きで柱を立てるんですって。
メヒコ そんなことできるの。
井川 柱をよーく見ると縦に走ってる木目の間隔が若干狭くなってる。
狭くなってる方がうえです。
メヒコ わからないわ。
井川 ほんとに微妙だからね。
上と下を逆になってる柱を逆さ柱って言うんです。
メヒコ 逆さ柱。
井川 逆さ柱は柱が鳴くって、昔から忌み嫌われてるんだって。
メヒコ そうなんだ。
井川 そうなんだ。ってかんじですよね。
そんなこと知らない。
でも日光の東照宮にはわざと一本だけ逆さ柱があるんだって。
物事はすべて完成させるとそのときから衰退が始まるから、
それを避けるために、
わざと逆さ柱にすることで、これはまだ未完成だよっていうね。
恐るべし徳川家でしょ。
メヒコ 昔の人はすごいね。
井川 なんかすごいよね。すごいなぁ。
それに比べたら自分は、なんてインチキなんだと、
なんだか空しくなりますね。
メヒコ あなたはインチキだものね。
井川 インチキですね。
メヒコ 法律で規制されてどうのこうのじゃないところがすごいね。
井川 そう。そこなんですよ。
建築基準法がどうのとかじゃないでしょ。
繰り返しだけど、ただのボクらの物置小屋ですよ。
住むわけじゃない。
冬場使うわけじゃない。
でも逆さ柱は使わなかったぞ。みっともないからって。みっともないからやらない。
メヒコ しびれるね。やるな佐藤ちゃん。
井川 そういうものをマメヒコの名で作れただけでも、ボクらはこの小屋を
建てた甲斐があったと思ってます。
メヒコ これから、その覚悟を試されると言うことはあるわね。
引っ込みがつかないでしょこういうのがここにあると。
井川 試されると言うより、自分で追い込んだというのはあります。
この小屋に見合うだけのことはやろうと。
思ってた以上の小屋で重荷でもありますけど。
メヒコ ハタケの真ん中にこんな小屋を建ててしまっていいの?
井川 どうなんでしょうか。
ハタケというのは、農地ですね。
農地というのは建物を建ててはいけない、そういうことになってるんですね。
それでボクらも心配になってね。
メヒコ そりゃそうよ、いくら住まないと言ったって、
立派だし、目立つし。
井川 はい。聞きに行きました。しかるべきところに。
そしたら、この程度の規模なら問題ないと。
10坪ですから。
メヒコ それでだめって言われてたらどうするつもりだったの?
これだけのもの作って。
井川 だめだと言われてたらですか。
佐藤さんは、ヘリコプターで運ぼうって言ってました(笑)。
メヒコ 運べるの?
井川 このままロープで吊して、好きなところまで運ぼうよって。
びくともしない様に作ってあるから大ジョブだって。
メヒコ そんなばかな。井川さんは一時が万事行き当たりばったりでやってるの?
井川 うーんどうだろう。
ボクは相当慎重だと思います。
とにかく紙の上で考えるまで考えてみる。
それは日頃から、うまくいく方法についてはずっと考えるのがひとつの癖です。
ほんとに心配性ですから。
だから準備もできるだけしてみる。
念入りに念入りに悲観的に悲観的に考えて。
それで冒険に挑む。
考え抜くと、あっいけるなって、道が見えるんですね。
まっすぐの道が見えなければ絶対にやらない。
見えたら、あとは、とりあえずやってみるという思考回路に変えちゃう。
行き当たりばったり回路に変える。始まったら、もう、
用意周到に準備したものなど、実のところほとんど役に立たないですから。
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