メヒコ ふーんあの方がね。
井川 凄腕の大工さんなんですよ。
お寺や神社なんかも造る宮大工さんなんだから。
メヒコ 荒野のガンマンにしか見えなかった。
井川 でもそのあらかじめ木取りをして、現場に来てやっていくんだけど、
よく見てると全部手作業なんですよ。
メヒコ ノミとカンナと金づちでやってました。
井川 東京でマメヒコなんかも今作ってますね。
そこはみんな電動工具ですね。
電気ドリルを腰から下げて仕事してる。
ボクなんかも電ドリ大好きですけど。
この電気ドリルというのは、使うのは木ねじですね。
ねじというのはやり直しがきくんですよ。
しまったと思ったら抜けばいい。
けど、釘と金づちでは、やり直しがきかない。
メヒコ 釘だって抜けばいいでしょ。
井川 釘は1度抜いたら、だめです。
1度に決めないと。
メヒコ 緊張感が違うわね。
昔のフィルムカメラとデジタルカメラがそうよね。
井川 そうです。
メヒコ フィルムなら一枚のシャッターの重みが違うものね。
デジタルならとりあえず撮っておこうみたいな。
井川 そういうやり直しのきかないところで訓練してきた人はやっぱり違う。
小屋を作ってる佐藤さんを見てると、そう思う。
メヒコ いまの日本はどこもそうね。
誰でもできることが一番良しとされていて、
その恩恵を受けているんだけど、無くしたものもずいぶんとあるわね。
腕利きの大工なんてのもそうよね。
井川 腕利きのカメラマンなんてのもそうだろうしね。
だれでもできる様にすることは、つまり、それに取って代わって、
コンピューターがやってくれてるわけですね。
すると人件費が浮いて、設備投資にお金は流れる。
この小屋を建てるときも、どうなるんだかわかんないんだから、
なるべく安くしたほうがいいと。そう言われるんですね。
メヒコ 普通みんなそう言うわね。
井川 今作ってるマメヒコ パート3はなんやかんやで、4000万円かかってます。
メヒコ へぇー。そんなにかかるの。
井川 そんなにかかるんですよ。
なんかそんな高級品を使ってるんじゃないんですよ。
けど、数百万とかで店をやろうとする人が大勢いるわけだから。
マメヒコは(お金)かけるよねー。って言われます。
だいたいボクはかかっちゃうんですけど。
でも何にかけてるかって、人件費にかけてるんですよ。
メヒコ 設備費ではないということ?
井川 名目では設備費ですよ。
お店を作るにしても、小屋を造るにしても、設備投資でしょ。
けど設備費でも、それを作ってる人たちの人件費にかけてる。
だってね、打ち合わせだって、一回すればいくらってお金ですから。
打ち合わせも少ないほど安く済むわけです。
顔を合わせる時間が短いほど、安く済む。
これね、佐藤さん、2ヶ月近くかけてるんですよ。たかが物置に。
だから、きっと佐藤さんはめいっぱい安くやってくれたんだと思います。
そういうのが、誰にもわかんない。
あいつは高いって思われるけど、
思われても、オレは安くやってるって思ってるんだからすごいなって思う。
メヒコ オレは安くやってるって思ってるんだ。
井川 思ってると思いますよ。
横でじっと見てればわかるもの。
たとえば、窓枠がありますね。
はいはい、この窓枠。
これは佐藤さんが板金屋さんに頼んで、はめ込んでるんだけど、
雨が横からなぐりつけても、中に入ってこない様に、
きちんと金物で入ってこない様に、細かく返しがついてる。
メヒコ うんうん。
ついてる。
井川 普通なら既成の窓枠使いますよ。
すでにあるものをね。それを買ってきて、はめ込む。
けど、この小屋に合わせた寸法で板金屋さんに作ってもらう。
それは設備としては頼んで作ってもらう方が高いです。
板金屋さんの人件費が入りますから。
メヒコ 板金屋さんの人件費を値切れば、既成のものをホームセンターで
買ってくる方が安いわけね。
井川 そう。
顔を合わせることがお金だから、なるべく顔を合わせない様に作れば、
安く済むという仕組みに世の中がなっている。
メヒコ 安い仕事だからかまっちゃらんないっていうね。
井川 それはね、マメヒコを作りながらいつも大工さんの使い捨てだなって、
思ってきたんですね。
入れ替わり違う大工さんが、なんの思入れもなく流れ作業で
ぱっとやっちゃう。
みんな文句言ってるんですよ。
「安い仕事にかまっちゃらんない」って。
メヒコ そうかもしれません。
井川 だからもっと安く作れ、ってことは、
それは顔をもっと合わせずに作れってことなわけだから。
材料なんてさほど変わらないんですよ。
メヒコ あちこち安いもの使ってるわよね。
井川 そうです。
それで、今回の建物の壁は縦に貼ってるんですけど。
メヒコ うん。たしかに。
井川 北海道らしくと言ったら、普通横に貼るんです。
メヒコ そういえばそうね。
井川 下見板って言って。
けど、それはやめた方が良いと佐藤さんが言うんですね。
メヒコ あらどうして。
井川 ボクは横に貼りたかったんですよ。
みんな横なんだから。
けどね。このあたりは森だと。
森の中に小屋を建てると。
メヒコ うんうん。
井川 キツツキが来ると。キツツキはこの小屋に穴を開けるに違いないと。
メヒコ うんうん。
井川 キツツキに開けられた穴を補修するときに、
横に貼ってしまうと、差し替えができない。
メヒコ はぁなるほど。下から上に上に重ねて貼っていくから。
井川 そう。けど、縦に貼っていけば差し替えるのは簡単だと。
だから、縦に貼った方が良いと。
メヒコ そうなんだ。
井川 そうなんだとしか言えないですよね。
キツツキが来るから縦に貼れって。じゃぁそうしてください。
とお任せするしかないじゃないですか。
こっちはキツツキなんて見たこともないわけだし。
メヒコ キツツキ言われてもね。
井川 でも、ほかの佐藤さんが以前建てた建物も見せてもらったんですよ。
そしたら、やっぱり穴だらけだった(笑)。
メヒコ キツツキなんだ。
井川 そう。で縦に貼ってもらったんだけど、
縦に貼る方がよっぽどめんどくさいんですよ。
0
mamehicoハタケマメヒコ '10 十勝メヒコの部屋メヒコ ふーんあの方がね。 井川 凄腕の大工さんなんですよ。 お寺や神社なんかも造る宮大工さんなんだから。 メヒコ 荒野のガンマンにしか見えなかった。 井川 でもそのあらかじめ木取りをして、現場に来てやっていくんだけど、 よく見てると全部手作業なんですよ。 メヒコ ノミとカンナと金づちでやってました。 井川 東京でマメヒコなんかも今作ってますね。 そこはみんな電動工具ですね。 電気ドリルを腰から下げて仕事してる。 ボクなんかも電ドリ大好きですけど。 この電気ドリルというのは、使うのは木ねじですね。 ねじというのはやり直しがきくんですよ。 しまったと思ったら抜けばいい。 けど、釘と金づちでは、やり直しがきかない。 メヒコ 釘だって抜けばいいでしょ。 井川 釘は1度抜いたら、だめです。 1度に決めないと。 メヒコ 緊張感が違うわね。 昔のフィルムカメラとデジタルカメラがそうよね。 井川 そうです。 メヒコ フィルムなら一枚のシャッターの重みが違うものね。 デジタルならとりあえず撮っておこうみたいな。 井川 そういうやり直しのきかないところで訓練してきた人はやっぱり違う。 小屋を作ってる佐藤さんを見てると、そう思う。 メヒコ いまの日本はどこもそうね。 誰でもできることが一番良しとされていて、 その恩恵を受けているんだけど、無くしたものもずいぶんとあるわね。 腕利きの大工なんてのもそうよね。 井川 腕利きのカメラマンなんてのもそうだろうしね。 だれでもできる様にすることは、つまり、それに取って代わって、 コンピューターがやってくれてるわけですね。 すると人件費が浮いて、設備投資にお金は流れる。 この小屋を建てるときも、どうなるんだかわかんないんだから、 なるべく安くしたほうがいいと。そう言われるんですね。 メヒコ 普通みんなそう言うわね。 井川 今作ってるマメヒコ パート3はなんやかんやで、4000万円かかってます。 メヒコ へぇー。そんなにかかるの。 井川 そんなにかかるんですよ。 なんかそんな高級品を使ってるんじゃないんですよ。 けど、数百万とかで店をやろうとする人が大勢いるわけだから。 マメヒコは(お金)かけるよねー。って言われます。 だいたいボクはかかっちゃうんですけど。 でも何にかけてるかって、人件費にかけてるんですよ。 メヒコ 設備費ではないということ? 井川 名目では設備費ですよ。 お店を作るにしても、小屋を造るにしても、設備投資でしょ。 けど設備費でも、それを作ってる人たちの人件費にかけてる。 だってね、打ち合わせだって、一回すればいくらってお金ですから。 打ち合わせも少ないほど安く済むわけです。 顔を合わせる時間が短いほど、安く済む。 これね、佐藤さん、2ヶ月近くかけてるんですよ。たかが物置に。 だから、きっと佐藤さんはめいっぱい安くやってくれたんだと思います。 そういうのが、誰にもわかんない。 あいつは高いって思われるけど、 思われても、オレは安くやってるって思ってるんだからすごいなって思う。 メヒコ オレは安くやってるって思ってるんだ。 井川 思ってると思いますよ。 横でじっと見てればわかるもの。 たとえば、窓枠がありますね。 はいはい、この窓枠。 これは佐藤さんが板金屋さんに頼んで、はめ込んでるんだけど、 雨が横からなぐりつけても、中に入ってこない様に、 きちんと金物で入ってこない様に、細かく返しがついてる。 メヒコ うんうん。 ついてる。 井川 普通なら既成の窓枠使いますよ。 すでにあるものをね。それを買ってきて、はめ込む。 けど、この小屋に合わせた寸法で板金屋さんに作ってもらう。 それは設備としては頼んで作ってもらう方が高いです。 板金屋さんの人件費が入りますから。 メヒコ 板金屋さんの人件費を値切れば、既成のものをホームセンターで 買ってくる方が安いわけね。 井川 そう。 顔を合わせることがお金だから、なるべく顔を合わせない様に作れば、 安く済むという仕組みに世の中がなっている。 メヒコ 安い仕事だからかまっちゃらんないっていうね。 井川 それはね、マメヒコを作りながらいつも大工さんの使い捨てだなって、 思ってきたんですね。 入れ替わり違う大工さんが、なんの思入れもなく流れ作業で ぱっとやっちゃう。 みんな文句言ってるんですよ。 「安い仕事にかまっちゃらんない」って。 メヒコ そうかもしれません。 井川 だからもっと安く作れ、ってことは、 それは顔をもっと合わせずに作れってことなわけだから。 材料なんてさほど変わらないんですよ。 メヒコ あちこち安いもの使ってるわよね。 井川 そうです。 それで、今回の建物の壁は縦に貼ってるんですけど。 メヒコ うん。たしかに。 井川 北海道らしくと言ったら、普通横に貼るんです。 メヒコ そういえばそうね。 井川 下見板って言って。 けど、それはやめた方が良いと佐藤さんが言うんですね。 メヒコ あらどうして。 井川 ボクは横に貼りたかったんですよ。 みんな横なんだから。 けどね。このあたりは森だと。 森の中に小屋を建てると。 メヒコ うんうん。 井川 キツツキが来ると。キツツキはこの小屋に穴を開けるに違いないと。 メヒコ うんうん。 井川 キツツキに開けられた穴を補修するときに、 横に貼ってしまうと、差し替えができない。 メヒコ はぁなるほど。下から上に上に重ねて貼っていくから。 井川 そう。けど、縦に貼っていけば差し替えるのは簡単だと。 だから、縦に貼った方が良いと。 メヒコ そうなんだ。 井川 そうなんだとしか言えないですよね。 キツツキが来るから縦に貼れって。じゃぁそうしてください。 とお任せするしかないじゃないですか。 こっちはキツツキなんて見たこともないわけだし。 メヒコ キツツキ言われてもね。 井川 でも、ほかの佐藤さんが以前建てた建物も見せてもらったんですよ。 そしたら、やっぱり穴だらけだった(笑)。 メヒコ キツツキなんだ。 井川 そう。で縦に貼ってもらったんだけど、 縦に貼る方がよっぽどめんどくさいんですよ。