絵の具の数について

ハタケに来て、地方での生活というものをしていると、時々こう聞かれます。

なんであなたたちは、こんなとこに来てこんなことをしているのか。

わざわざなんで、という感じがたっぷり伝わってくる。

こちらでは、大きな会社に勤めることが良し。
大企業、公務員、医者、弁護士というような仕事に就くことが良し。
それぞれの職業の善し悪しと言うよりも、
既得権益がたっぷりある仕事に就くことが上で、
そうではない仕事は下。

そういう感じが伝わってくる。

この町でそう思っているヒトは結構な数いると思えるので、
日本の大半がそんな風に思っているんだろうなとぼんやりしてみる。

そして、こう続く。

あなたたちは、立派な大学を親のおかげで出させてもらっているにもかかわらず、
夢だかなんだか知らないが、なんでこんな畑仕事なんかをしているのか?
産業構造的にハタケ(=農民)をやるというのは下層の仕事ではないか。
(少なくともあなたたちの野良仕事は遊びにしか見えない。)
きちんと休みがあって、労せずとも高給が取れ、
女性なら早いうちに食いっぱぐれのない男性に出会う機会の多いところに居て、
子を早くたくさん産むのが幸せなのですよ。
あなたたちの親はあなたたちの幸せを考え、
だからこそ自分の贅沢を慎み、かわりに、
あなたたちへ勉強机や辞書を買い与えたのであり、
学習塾に通わせたのであり、大学にまで通わせてあげたんですよ。
そのことを理解しているのか。
君たちときたら。一体何を考えているのかちーともわからない。

けして強く批判されると言うことはないです。むしろ好意的に迎えてもらっている。
けれど、ちーともわからない。という感じは伝わってくる。
つまりボクらは親不孝に気付いていない若気の至り連中、ボクはその筆頭がしら。
そう言うことになるんだと思います。
ボクらもニタニタ笑ってなんの反論もしないから、なおさらちーとも伝わらない。

時代。

大きな潮流の変革期にさしかかっていることはみんなわかっている。
もう何が上で何が下かすらわからなくなってきている。
そもそも上とか下とかあるのかすらわからなくなってしまっている。
そういう背景が後押しするのか、ワカモノがこぞってマメヒコを志願しに来ます。
けれど。

既得権益のある歴史ある職業群から比べれば、
カフェなんてものは、いいですか、
産業構造のうま味順で言えば最下層にあるんですよ。
むしろ、田舎の守られた農業なんかより、うま味で言えばずっと下にある。
そういうものなんです。
ひがんでるんじゃないです。そういう自覚がありますかというはなし。

人手は薄くて当たり前。
1人の人間がいくつも仕事を兼任するのは当たり前、
○○専用のスタッフや部署なんてのはありえないし、
店員として接客もやる、調理もやる、
さらに発注もやる、経理もやる、掃除もやるし、シフトも作る、
デザインもやれば、あれもこれもする。
どんな仕事でもそうですが、目に見えているものは氷山の一角。
ごっそりある裏方の仕事は兼任してだれかがやってるから回っている。

どんなことでも自分たちでやる。
その色々の中にひとつ、ハタケがある、そう言うことなんだと思います。
少ない絵の具で、書きたい絵を描いているんだと思います。

少ない人数でなにかをやるときにひとつのコツがあると思う。

「ひとりあたりが頑張る」。

それはそうですね、
ひとりひとりが自分のパフォーマンスを最大限発揮すれば、
全体の仕上がりを大きく左右するのは当然です。
そしてもうひとつ大事なことは。
それより大事だとボクが思ってることは。

「なんでもかんでもきちんとやらない」。

どっかに専門的に肩入れすれば、どっかはおろそかになる。
ただでさえ人数が少ないんだから。
全部を全部きちんとやるなんて無理なんだと思う。
それでも全部やりなさい、なんていうのは、
なにもしてことなかったヒトたちの幻想か、
湯水のようにお金があるところにいたヒトの理屈だと思います。

なんで学校は始めに12色の絵の具を買い与えてしまうんだろうと思う。

絵の具が7色しかないなら、7色で描ける絵を描けばいい。
6色なら6色の絵を描けばいいし、
2色なら2色の絵を描けばいい。
絵の具の数に合わせた絵を描く楽しさということを知った上で
色を増やしたければ増やせばいいのにと思ったりします。

そりゃ不手際多く、叱られることも多いですよ。
お客様センターも、渉外担当も、現場監督もいないんだから、
へらへら笑ってごまかすしかないんですけど。

ケセラセラ、毎日、楽しくやるしか前に進めない、んだから仕方ないとボクは思う。

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