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みんなたちへの豆教室 VOL.29

みんなたちへの豆教室 VOL.29

 

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悪魔がたずねてきたとき、イワンは
イワン「いいとも、いいとも。こっちにいらっしゃい。ボクらには食べるものはどっさりある」と言った。

けど耳と口の不自由な妹は、悪魔をテーブルに通さなかった。
それはなぜか。
イワンの国に一つだけ決まりがあったからです。

手に豆が出来ている人は食事のテーブルへつけるが、手のきれいな人は他人の食べ残りしか食べられない。と。

悪魔の手はすべすべしていて、爪が長く延びていた。
軟弱な手は信用できないと目と耳の不自由な妹は悟ったんです。
なまけ者に限って、ろくすっぽ仕事もしないくせに、誰よりも早く食事に来て、おまけに人の分まで平げてしまう。
手のきれいな悪魔はだからテーブルにつけなかった。
怒った悪魔は兄のイワンにこう言い返します。

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悪魔「みんなで手を使って働かなきゃならないなんて、お前の国はほんと馬鹿だ」
イワン「そうかな」
悪魔「国王のお前が馬鹿なんだ。いいか。賢い人は何で働くか知ってるか?」
イワン「馬鹿だからそんなことわかんないよ。仕事は手や背中を使ってやるんじゃないのかい」
悪魔「だから馬鹿だっつーんだ。バカバカバカ。
頭で働くんだよ。アタマ。そうすりゃ手で働くよりずっと得するんだ」
イワン「えっそうなの。知らなかった」
悪魔「頭で働くことは手足使うより百倍もむずかしんだ。お前たちゃいつまでたっても馬鹿だから、オレ様が良い方法を教えてやる」

そう言って難しいことを三日間、国民に演説するんだけど、誰もチンプンカンプンで、最後は悪魔も腹を空かし頭を地面に打ち付け死んじゃう。

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この話しをね。
イワンのバカをね。
丸ごと受け入れるほどボクも子供じゃないし、かといっておとぎ話と嘲笑するほど大人でもないんです。

 誰だって損得勘定で生きてるのがニンゲンだぞ。
 損することを承知で生きてるヒトなんかいるもんか。
 みんな自分がなによりかわいいのさ。そうじゃないというやつは偽善者だ。

イワンはバカか、ほんとは賢いのか。
イワンは負け組なのか、それとも勝ち組なのか。

そういう議論に何の意味があるんだろうと思ってしまう。
そんなことどっちでもいい。
ただ、たぶんボクはイワンが好きなんです。
テーブルに通してもらえないけど好きなんですね。

それでも、イワンが厚く大きな手を振っているのを見て、ボクは自分の手を何度も見てしまうと思います。

すべすべしたボクの手にできること。
それは何なのかを。
あれから、ずっと考えているんです。

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